Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「宙色バス/街」

冬のツアー決定!“ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2009〜酔杯リターンズ〜”12/1よりスタート!
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/info/index.html


 ↑初日のリキッドには行きたい。小さい箱でアジカンを観たい、たまには。


 アジカンのDVD「映像作品集6巻 〜Tour 2009 ワールド ワールド ワールド〜」のジャケットはいつも通りに中村佑介さん。今度はパンダだぁ!でも、女の子は徹子さんじゃないみたいだ、当然だけども。


 今読んでいる最中の高原基彰著「現代日本の転機」を特集したLife番外編「『現代日本の転機』をめぐって」 Part1が配信。
http://www.tbsradio.jp/life/2009/09/life_part1.html


 普段同じようなタイプの小説ばかり読んでいるとこういう学芸書? っていうか社会学の本を読むと思いのほか時間がかかってしまう。当然ながら馴染みの無い言葉が大量に現れるとペースが上がらない。でも、脳が働いている感じはする。勉強しとけばよかったなあってつくづく思ったりもする。
 

 まあ、大学辞めなくても商業大学だったのでそれらしい科目はなかった気はするんだけど、基礎教養的な部分が欠けているなあってこの数年よく思う。まあ、やっぱり学校にいる時よりも知らないといけないなあって思う事が増えた時がいちばん勉強としてはいい時期なのかもしれない、おまけに今はSFの基礎教養(っていうかSFをまったく通ってないからなあ)も仲俣さんから借りた本でなんとか付けようとしている。


 仲俣さんが若い頃には「いま読むべき本は、岩波文庫とハヤカワ文庫にしかない」って友達と話してたと教えてもらった。「ハヤカワセット」が終わると「岩波セット」を貸してもらう予定だ。世代間ギャップというのもあるけど思想にしてもSFにしても断層みたいに世代間で途切れてしまっている感じ、僕が知らない作家、でも読んでおくべき作家を年齢が上の人から教えてもらうことはよくよく考えるとすごくありがたいなって思う。


 年上が離れている人から作品とかを教えてもらうと自分が知っているものの元ネタだったり、影響を与えていたものだったりがわかって面白いというか、脈々と繋がっているとわかる瞬間がある。逆に考えると僕の世代が知らないそういうものを知っておく事が武器になるかもしれない、と思いたい。



ライムスター宇多丸のウイークエンドシャッフル/ザ・シネマ・ハスラー「しんぼる」
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20090919_hustler.mp3


「しんぼる」観た時のブログ
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20090915


 確かに最後にボタンっていうかちんこ押したらコミックの六巻が出てきたら凄かったかもね!、うんそうだね。宇多丸さんも松本さん好きだけになんかねえ、複雑な感じですなあ。


 まあ、「しんぼる」が松本さんの黒歴史になったりするかもなあ。テレビでコントができない状態で手段としての映画でしかないってのがやっぱりね、難しいのかもしれない。映画に愛される人間が監督した作品とそうじゃない作品はやっぱりもの凄く熱量が違うのかもしれないなあ、逆に映画でしか表現ができない人の作品っていい意味で狂ってるし、突き抜けるんだよね。


 松本さんにはやっぱりDVDとかでコント集とか出して欲しいなと映画観終わって思った。


 二十歳前の女の子にSOPHIAの事を話したら知らなかった、ジェネレーションギャップ!!!!


SOPHIA「街」


昔PWのコンペ用に書いた短編サウンドトラックは↑で。

「宙色バス」


 ゆらゆらと風に踊らされているワンピの裾を見ながらヘッドフォンから流れてくる懐かしく恥ずかしいあの頃の曲を聴いていた。
 自然と口が形を作ってその詞を歌いだす、そう自然に。
 あの頃きっとうちは彼の事だけしか見てなかったんだと歌詞の意味が昔よりも染みて込んできた、もうなんだかなあ。視線を白地に鮮やかな青のバラのイメージが咲いているワンピの裾から足下のミュールにさらに落とす。最近買ったばっかりなのにあんまり履いてないやつで、なんかしっくりとこない。なんでかわんないけどうまく気持ちと合わさってくれないんだ。なんでだろ。
 青のバラの花言葉は確か神の祝福だっけ、なんかドラマで見たけど。神の祝福か、神かあ、いたら間違いなくぶっ殺すなあ、うん、間違いなく。こんな世界にした責任取ってもらわないと割に合わないよ、ホントにマジで。


 ミュールの先にある道路のガードレールには枯れてしまった献花が置かれていて寂しくなった。淋しくなった、どっちのさびしいがこの気持ちに合うんだろうな、どっちでもいいけどさびしいことには変わりはないから。
 置いていった人の気持ちもわかるんだけど、でもね、そう、よく考えたらさ、それは置いた人のジコマンで、枯れた花を見て寂しいだとか淋しいって感じる人がいるとかの想像力が働いてないじゃない、そこが大事なポイントだと思うんだけど。きっと献花してる人は女の人なんだろうけど、女なら花が枯れるってことに気付けないのかな、気付けないならもう女捨ててるの? それすら気付かないぐらいに未だに心にポッカリと穴が空いてしまっているんだろうか。


 バッグからアイポッドを取り出してシャッフルした。流れてきたのはあんまり聴きこんでないバンドの曲だったけど、なんできちんと聴いてないんだったんだろうって思うぐらいに好きなロックだったから全身でリズムを取った。
 足下から視線は宙へ、星がたくさん見えた。星座の名前なんて知らないし、興味もない。ただ光ってる事だけが確かで、たしか光って7分か8分後かに地球に届いててみたいなことを彼が昔言ってたような気がする。うん、そんな気がするんだよね。タイヨウが爆発してもその7、8分後にならないと地球は真っ暗にならないって初デートした後に語ってたなあ、そんな話を初めてのデートでしてなんか変なやつだなって思って、合う度にそんなことばっかり言うから癖になってきて聞きたくなって会いたくなっていつの間にか好きになってたんだな、あいつの戦略に見事に引っかかったみたいな感じだった。


 上方の暗闇の中にぼんやりと光が切り込んできて音は聞こえないけどエンジンの振動が大気を伝わって、じんわりと暑さで汗ばんだ体に届く。宙からバスがやってくる、ずっと待っていたこの時が。うちはヘッドフォンを外す、するとバンドの演奏の8ビートとは違うセミの鳴き声が響いてくる。セミの鳴き声って求愛なのかあ、それとも死にたくないっていう祈りなのかな。
 まあ、セミは1週間の命、このバスは2日後にまた来る。セミの命よりも短いんだなあって思ってたらバスがスピードをゆるめた。
 言うべきこと言わないといけない。うん、これだけは絶対に言わないといけんだ。目を閉じる。風が吹いてて汗ばんだ腕に当たる、スゥーとする。


 ブレーキ音。ドアが開く音が体感でわかる。ゆっくりと目を開ける、ステップを降りてくるうちの恋人だった彼。笑っている、だからうんと頷くように笑い返す。ステップからコンクリの地上に降りる。バスはそれを確認して動き出す、煙がまう。そしてゆるやかなカーブを曲がるみたいな軌道を描いて走り出したバスをうちらは見送った。


「よお、元気そうじゃん。少し太った?」
「いきなり失礼だな、太ったけどさ。どう久しぶりのこっちは」
 うちはそう言いながらあの頃のように右手を差し出す。彼がそれを握ってくれる。体温はない、うん、昔みたいなあの熱はもう彼にはなくて。
「そんなに心配な顔しないでよ、ここの空気は懐かしい。でもたぶんこれで最後なんだろうな」
「なんで」
 うちが言う事を彼は察してるのかなとドキッとする。言わなきゃダメだ、言わなきゃいけないんだ。うん、きちんと。
「毎年バスに乗る時になんでか来年分の乗車券くれるんだけど今年はくれなかったんだよ、でバスに揺られて考えてたんだ。なんでだろうなって」
「あのね、うち今年の冬に結婚するんよ、だからだと思う」
「そっか、そういうことか」
 彼は自分に送られた献花を見て哀しく笑った、セミが鳴いている、セミが泣いているように聞こえる。彼のサヨナラのようにうちの中でさびしく泣く。
 言いたい事いっぱいあるけど、言えないよ、そんな顔したら、言えないよ。