Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「ディア・ドクター」

 とりあえず6連チャンが終わった。雨も降りそうな予想だったのでお台場合衆国には行かない事にしてまだ公開している西川美和監督「ディア・ドクター」を観ることにした。


 月に一度か二度はここ最近観にきているような気がするヒューマントラストの映画館に。


西川美和監督最新作『ディア・ドクター』公式サイト
http://deardoctor.jp/


 「ゆれる」のヒットで知られる西川監督の新作は落語家笑福亭鶴瓶を主演に迎えて。山あいの過疎の村で絶大な信頼を受けていた村の唯一の医師・伊野治(鶴瓶師匠)が突然失踪する……。
 キャッチコピーは「その嘘は、罪ですか。」とあるように村唯一の医師である伊野は実は本物の医師ではないというのが冒頭の辺で失踪し刑事によって示される。刑事は松重豊さんと岩松了さんの二人。この二人の感じは緩急があるみたいでいい、岩松さんって笑顔がなんか嘘くさくていい。松重さんは怖い、いい意味での存在感。


 この映画のやっぱりいいのは主演が鶴瓶師匠だと言う所が大きい。村の人たちとの関係性や診療風景に違和感がないのは彼のキャラクターがリアリティをもたらしている。NHKの番組で田舎を訪ねていることもあって一般の人と絡むのも上手いし、もともとの彼の親しみやすさが大きい。


 僕が彼に親しみを感じるのは彼の本名が僕と同じで「学」というのもある。後輩芸人からも「つるべ」と呼び捨てされたりと存在自体が絶妙なバランスとポジションにいることもあるだろう。


 裸にまるわるエピソードが多く、ある意味での伝説が多い。テレ東を出禁にされたり、股間や肛門をテレビで露出したから。27時間テレビでは酔っぱらって老婆の胸を揉んだり放送禁止用語を連発、おまけに股間を生放送で出してしまったりとベテランとは思えない行動。と好感度もあるのにハプニングなことを起こしてしまう数少ない芸人さん。


 研修医の若者を瑛太が演じるが、過疎地域に来たことにそれほど抵抗をせずに、逆に伊野と地域の人の触れ合いによって大病院の院長である父親を医者じゃない経営しか考えていない偽医者だとすら思うほどに伊野という医師に好意を持っていく。


 脇を固めるのが、伊野が偽物だと知っていたのは病院の手伝いを看護士をしている余貴美子と製薬会社の外回りの香川照之。医者の娘に胃が悪い事を隠そうとし伊野に一緒に嘘をついてほしいという八千草薫。とちょい役で中村勘三郎さんとも出てきて脇をしっかりと固めている。


 映画だなあと思う感じですね。「ゆれる」に続いて出ている香川さんも出てるけど前作とは違った感じ。


 神さま仏さまより伊野さまだと村人に言われる彼。誰も彼の事を疑わない、彼は内心いつかバレると脅えてはいる。そんな彼が研修後にまた戻ってきたいという瑛太扮する相馬に「自分はニセモノや」と内心を吐露する。がこれが真実だとは思わないで瑛太は父も自分もニセモノだと言う。


 伊野はそうじゃない、自分は医師免許を持たないんだってことを言いたいが相馬はそう受け取れずに会話は進み、それでも普段の温厚な人に信頼されている伊野ではなく感情をむきだしにする。かなり重要なシーンでインタビューでも鶴瓶師匠はあのシーンが印象的だと語っている。


 このシーンを観ていて僕が感じた事は、人は真実を告げようとする時に、受け取る側、つまり相手側がそれをきちんと受け取れるわけではないということ。伊野の言葉を相馬は自分の都合や感情によって解釈して受け取る。だから彼の意図する本心を汲み取る事はできない。


 これは生活して人と関わる上で起きうる事態だ。僕だって相手が言った言葉をそのまま受け取るわけではなくて、自分の都合のいいように解釈するし誤解して受け取ることは今までにもあっただろうし、これからもある。


 実は人間の言葉によるコミュニケーションはそういうことや誤読や誤解を充分に含みながら成立している。そこのズレがだんだんと深くなるともはや修復はできなくなる、というとても危ういものでもあるのだと言っているようなシーンに思えた。


 最後の終わり方はなんかよかった。「ゆれる」のお兄ちゃんの最後の顔は観る人によって解釈がわかれるが、この終わりはいいなと思う。


 失踪するきっかけとなる八草薫の娘役の井川遥。観て思ったのが井川遥と元アナウンサーの雨宮塔子って似てるよね。彼女は本物の医者だからやがて母親のことで自分のことがって言う流れなんだけど伊野が秒速で逃げる辺が実に人間味溢れるというか、それはないでしょみたいな行為を、たぶん人間ってしてしまうと思う。


 今までバレやしないかと不安がどんどん積み重なってて、ある臨界点を彼女の登場によって一気にオーバーしてしまう、だから彼は失踪する。失踪した後に実家に電話して伊野の実父が本物の医者だったことが明かされ、そのことが彼にある種の負い目、憧れを持たせていたことが一瞬だが描かれていたりして上手い作りになっているなあと思った。


 客層はかなり高かった感じで、「ハゲタカ」劇場版よりも高かったような、「精神」も高かったけど。「ゆれる」ではオダギリジョー主演ということもあって若い層が観に来てて、今回は鶴瓶さんで年齢層的には上が来てて、西川作品は評価もされているのでファン層はだいぶ広がったのかなあ。


 西川さんって広島の「清心」出身みたい、お嬢なのかしら。まだ三作目なのに知名度はすごい上がり方してるなあ。これで直木賞取ってたらもっと上がってたなと思う。


 最近読んだ本。少女マンガ「青春エール」最新巻、主人公は吹奏楽部一年で、同級生の男の子は甲子園を目指して部活に励んでいる。そんな二人の淡い感じで、彼を応援すること、吹奏楽部としての応援としてスタンドから彼を見る。今の所は少女マンガのお互いが好意を持っているけどそれをきちんと伝えていない関係性。


 あま〜い、ウブなお二人さんです。少女マンガの王道で行けば二人いい感じに気持ちを伝え合うけど、恋のライバル出現、トライアングル発生、そこを乗り越えて〜、甲子園出場する彼をスタンドから楽器で応援みたいな展開だろうか、あるいは彼がケガしてというトラブルが挿入されるかどうか。


 同じ少女マンガ「君に届け」はアニメ化するんでさらにヒットしそう、こっちもわりと王道な少女マンガ展開。見た目が暗く周りからも「貞子」と呼ばれる女子高生の黒沼 爽子は、周囲の誤解を解き、友情・恋愛などを通して成長していくという内容で少しコミカルで実写化するなら栗山千明がピッタリ。


 マンガ大賞09の大賞に選ばれた「ちはやふる」は少女マンガだが「競技かるた」を題材としていて内容的には黄金期の少年ジャンプの大きな柱だった「友情」「努力」「勝利」が前面に出てきていてかなり面白い、恋愛要素が今の所あまりないが。フジテレビ系列の「ノイタミナ」枠でアニメ化でもすれば男女共にさらにヒットする気もするんだけど。


 「GIANT KILLING」の最新刊も。サッカーマンガだけど主人公は監督という珍しいタイプでサッカーがそんなに好きじゃなくてもかなり面白い。 タイトルのジャイアント・キリングとは、「大物食い」や「番狂わせ」を意味する言葉でスポーツ競技において実力差がある格上の相手に対し、格下が勝利を挙げた場合に引用される。そういうのが醍醐味な感じの内容。
 いかに選手の能力を把握し信じ、個性や能力をさらに発揮させる、あるいは本人に気づかせていくかでチーム自体が活性化していくか。応援団との関係性も地域密着型企業プロスポーツにとって大事かも描かれている。


 新書「アダルトビデオ革命史」はいろんな人が日記やブログで絶賛というか面白いと書かれていたので手に取った。ほとんど後半部分まで一気に読んだ。これはメディアの歴史であるし、映画からテレビ変革と、ビデオカメラの高性能化小型化がいかに大きな影響を与えたのかも、ビニ本や本番のあるなしなどがいかに生まれ消えて次に繋がって行ったかが時間軸通りに進む。


 あとビデオデッキの存在や家庭への普及、それらと共にあったアダルトビデオの存在。ビデオにしろDVDにしろ新しいメディア、ネットもだったけど、エロが最初の起爆剤になる。エロは新しいメディアに最初の普及にかなりの貢献度があって、新しいメディアが成功するかどうかはエロを求める男子のそれらの要求に応えれるかどうかが実は大きい。


 AV女優という存在の誕生と認知度などと「an・an」のセックス特集の最初の一回「セックスしてキレイになる」などが同時多発的に世に出て相乗効果をもたらしたなども書かれていて、何かが始まる時、のちに大きなものとなる場合はその下地があって、関係のなさそうな所から次の展開へムーブメントの匂いや可能性をかぎとった人たちが仕掛ける時に、まるで意気投合して連携しているかのように同時多発的に起きて、それが受け取り側には繋がって大きなキッカケになっていくというのがわかる。


 最後まで読んでないけどかなり読みやすい。


 さっきは大雨というか局地的な雨なのか、台風来た時みたいな豪雨だった。これは今読み返している古川さんの「サウンドトラック」の近未来の東京みたいに熱帯化してスコールが発生するのが当たり前な設定が近い未来本当になるんじゃないかって思わせる雨だった。


 このまま行くと日本列島で極楽鳥が求愛のダンスが踊るが何十年かしたら見えるかもしれないなあ、スコールって熱帯地方のにわか雨を指していうことが多いけど本来は熱帯地方でみられる突然襲ってくる強風のことらしくて多くは大雨を伴うのが本来の意味らしい。


 さっきの雨みたいなのは実際は驟雨(しゅうう)なんだよなあ。日本英語みたいに本来の意味は失われて新しい意味をともなって僕らに認知されていく、まあテレビで言ったらもう定着してしまう。

きのうの神さま

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青空エール 3 (マーガレットコミックス)

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ちはやふる(5) (BE LOVE KC)

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GIANT KILLING(11) (モーニング KC)

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アダルトビデオ革命史 (幻冬舎新書)

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サウンドトラック 下 (集英社文庫)

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