Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「詩人と女」

 チャールズ・ブコウスキー「詩人と女」を読んでいる。短編集とかは読んだんだが、これと「死をポケットに入れて」「くそったれ!少年時代」は読もうと思ってたけど読んでなかった。
 「死にポケットを入れて」は立ち読みした感じだと日記なので、今で言う所の芸能人や作家のブログを書籍化した感じに似てるなって思ってまだいいやって思った。


 「くそったれ!少年時代」はブコウスキーの幼年期の自伝だが、酔いどれ詩人になる前のブコウスキーも興味はあるんだけど、こっちの「詩人と女」のジャケに惹かれた。
 まあ、五十を過ぎて百キロのブコウスキーの分身である詩人のチナスキーが主人公で。年老いても若い女が近づいてきては酒を飲んで女とセックスして問題起きて、競馬して女の尻を追いかけて、あるいは追いかけられて、たまに詩の朗読に行って寝起きはたいていゲロを吐く所から始まって、他の作家とかには興味がなくて、でも詩人としてある種の人たちからは羨望のまなざしで見られている彼の物語。


 今こんな物語書く人もあんまりいないだろうし、こんな人間になりたいとは思えないけどどこか魅力的というか人間味が溢れてて欲望に正直で嘘付いて生きていないと感じる。
 パンクスという言葉が当てはまる数少ない作家。彼の作品は基本的に主人公がブコウスキーにしか見えない。人生に酒とセックスは大事なことらしい。八十まで生きて十八の娘とセックスをする、それは死と言うものに抵抗する最高の方法だとかそんなことを平気で言う。


 チナスキーの言う事はほぼ下品だし、性的な行為をしようとすぐに女に手を出すし、酒ばっかり飲んでる。でもタイプライターで書く事は大事だと知っている、それが自分の中にある揺るぎない核だ。
 それ以外の酒もセックスもギャンブルもドラッグもやがてはその中に吸収されて物語の一つになってしまう。彼が朗読していた風景はどんなものだったのだろう。チナスキーではなくチャールズ・ブコウスキーという作家の朗読。
 客は期待しながらも酒を飲み、平気でケンカもするしヤジも飛ばして罵倒もする、その中で詩をビールを飲みながら朗読する五十を過ぎてようやく専業作家になった男。


 自分の作品を朗読するような人間を信じないと書きながらも自分もしているという矛盾。読んでいるとやっぱりピート・ドハーティのソロがよく合う。共に詩人だし、どっちもパンクスな人だし、危なっかしいけど魅力的で作品は多くの人に支持され受け入れられている。


 僕が観たことある朗読というのは古川日出男さんの朗読ギグぐらいなもので。完全にブコウスキーの詩の朗読とは違うだろうけど。作家が自らの言葉で文章や詩を読む行為は魂を甦らす感じがしてどこか霊的な気がする。
 古川さんは一度文字として書いたらその言葉は死ぬという感じのことを言われていて、でも朗読することはその死んだ言葉を再度甦らす降霊術みたいなものだと。


 チャールズ・ブコウスキー古川日出男という作家はタイプとしては真逆に感じるけど。ブコウスキーはなんだろう、ストイックさを感じないというかやりたいことだけやっていくぜみたいな、古川さんはストイックなっていう言葉が発言からも感じる。


酔いどれ詩人になるまえに 作家チャールズ・ブコウスキー


spinoff企画「古川日出男・東京REMIXED」
http://www.tbsradio.jp/life/2008/11/spinoffremixed.html


 ↑作家・古川日出男さんのスタイルがわかるというか歩きながら街から物語を受胎して産み落とすという辺りなど作家としての考え方がすごくわかりやすく自らの言葉で語られている。


 ブコウスキーみたいな親父が隣に住んでたらかなり迷惑きわまりない事は確かだな。どっかでブコウスキーブームとか起こらないかな。このおっさんは度を超した野獣、いや肉食男子なんだが。今の日本だと女性の方が彼を受け入れるかもしれない。


文化系トークラジオ Life 外伝が配信中。
「日本のネットは進化したのか」Part6(外伝1)
http://www.tbsradio.jp/life/2009/07/2009628part6.html


「日本のネットは進化したのか」Part7(外伝2)
http://www.tbsradio.jp/life/2009/07/2009628part7.html


 「やりすぎコージー」は「ツッコミ7」特集。今田東野両氏がいるから楽しめる感じもある企画。スピードワゴン井戸田さんは復縁キャラというレアなポジションを獲得中。
 でも、ツッコミに関しては他の6人ほど積極的ではないような感じだ。増田岡田の岡田さんも基本的ボケなのでこの二人の非吉本勢はツッコミよりはボケだったり弱めに感じる。


 後藤さんのドヤ顔はムカつくが一度だけルミネで観た時に本当にフットボールアワーの漫才はキレてて鋭くて面白かった。岩尾さんのゆるい〜感じのボケに高速ツッコミで緩急をつけるのはさすがだなと思う。
 ただ、漫才師としてM-1で優勝してもタレントとしてテレビ番組で使いやすいかといえば全てのコンビがそうでもない。中川家は漫才は面白いけど東京でタレントとしてやっていくつもりもないだろうし、局もポジション的には使い辛いのかもしれない。


 最近バラエティでの芸人による一緒に仕事したいとかそういうランキングで上位に入るブラマヨの小杉さんはイジられる事で笑いも取れるしボケに対してもきちんと拾うのでやりやすいのだろう。ブラマヨは確かに面白い。
 ただ全面的に主役とか看板を張れるような華はない。でも、ひな壇とかにいるだけで心強いという意味でずっと出続けると思うし。今のハゲデブとブツブツキャラは年が増す毎に面白くなっていくと思う。老いを増すと「働くおっさん」みたいな哀愁的な笑いも出そうだし。


 「やりすぎコージー」の放送作家で「イマヒガチルドレン」の寺坂直毅さんが「胸騒ぎのデパート」という本を出すらしい。「紅白」オタクにして「デパート」オタクな寺坂さん。
 「やりすぎコージー」でもタレントでもないのに笑いを取っていた独自の価値観と言うかマニアックなことに興味を持って突き進んでいる人は面白い。しかし、「やりすぎコージー」からはいろんな人が出てくるものだなあって思う。


 マニアックな趣味や趣向の人をいかに楽しむか。それは関係性だけでもなくて耳を貸す事で世界観も広がるし面白い人に出会えることになる。馬鹿にするということではないのでお互いが楽しまないといけない。
 今田さんと東野さんは基本的に楽しむことに重点を置いているのでマニアックな趣味や趣向を持つ人の魅力が上がる、まあそれは二人の力量がデカイ。

詩人と女たち (河出文庫)

詩人と女たち (河出文庫)

死をポケットに入れて (河出文庫)

死をポケットに入れて (河出文庫)

くそったれ!少年時代 (河出文庫)

くそったれ!少年時代 (河出文庫)

MUSIC: 無謀の季節

MUSIC: 無謀の季節

ハル、ハル、ハル

ハル、ハル、ハル

サウンドトラック 上 (集英社文庫)

サウンドトラック 上 (集英社文庫)

サウンドトラック 下 (集英社文庫)

サウンドトラック 下 (集英社文庫)

胸騒ぎのデパート

胸騒ぎのデパート