Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「八雲百怪」

 ほぼ日イトイ新聞の今日のダーリンより転載


 とにかく書く、ということで、
 やっと続いているこの『今日のダーリン』ですが、
 ときどき、ほんとに書くことないんじゃないかと
 絶望的になるときがあるんですよ。
 
 なにを書くとか、なにを書かないとかについても、
 決まりなんかないわけですから‥‥自由なんです!
 自由なんだ、おれは自由だ。しかし、書けない。
 そんなときにも、「とにかく書けばいいんだ」と、
 ぼくは10年以上毎日更新の男として、えらそうに、
 助言めいたことも言ってるわけ、です。
 でも、書き出せないまま、もう1時間‥‥。
 そういう日の『今日のダーリン』です。


 そんな糸井さんですが、確かに続けて書くという行為は思いのほか難しいと僕も最近思ってます。ネタなんか毎日ないもの。僕はこのブログを「Life」の関連で知り合ったフリー編集者の仲俣さんが関わっているフリーペーパー「路字」にお手伝いとかさせてもらっていて、「路字」メンバーはブログをしなきゃという仲俣さんのノリについていって始めた。とりあえず一年は毎日更新だって思って約10ヶ月ぐらい続けている。


 イトイ新聞で前に一年続けること、さらに続けていくことの難しさが書いてあって、でもそれを続けることでわかることとか体力が付くっていうようなことが書いてあって、だから一年は毎日書こうと思った。まあ好きなこととかしか書けないわけだが。


 大竹伸朗著「見えない音、聴こえない絵」を読み終わった。最後の方なんか「時間」の概念のことを書いてあってカッコいいなあって思った。時間が過ぎて読み返すとまた違った感触を覚える本だと思う。クリエイティブなことをしている、しようとしている人が読むと読んだことで自分の中で化学反応が起きるそんな本だと思う。


 大塚英志×森美夏「八雲百怪」一巻を帰ってから読んだ。このコンビによる民俗学三部作の「北神伝綺」「木島日記」に続く三部作目で、「北神伝綺」は柳田國男、「木島日記」では折口信夫というこの国の民俗学創始者狂言回しに、そして「八雲百怪」では小泉八雲ことラフカディオ・カーンがその役回りになっている。
 僕は民俗学というものを学んだことは無いので詳しくはわからないんだけど、大塚英志作品を「MADARA」以降読み続けているわけで十五年以上大塚作品に触れているので彼が民俗学で学んだことを自身の漫画に取り込んでいてそれには触れている。


 上記の狂言回しの三人の共通項は大塚氏が言う所だと「来歴否認」らしい。その手のことを書いた本が『「捨て子」たちの民俗学小泉八雲柳田國男』って本で小泉八雲もそれに近いらしい、まあこれは「八雲百怪」の後書きで書いてあるので興味ある人は読んだらいいけどね。


 で、脇役っていうか重要な主役級のキャラが甲賀三郎で何度もこの名前を大塚作品の中で見た。「MADARA」シリーズにおける「BASARA」では主人公・伐叉羅の父であった。絶版化している最後の物語「天使篇」にも出てきていた名前。


 調べてみると甲賀三郎とは「諏訪地方の伝説の主人公の名前。地底の国に迷いこみさまよう。後に地上に戻るも蛇体となり諏訪の神になったという」とのこと。確かに前の漫画上でも彼の顔は蛇に近いもののイメージで書かれていた。
 「八雲百怪」では顔を包帯でぐるぐる巻きにしている設定だが、「門」を閉じる力を持っている。「門」とは妖怪や神、精霊などが通る道、つまり「ゲート」である。「MADARA」シリーズにおける「ゲート」とはアガルタの扉であり、開けたものは「世界の王」になるという設定だった。

 
 「ゲート」とは「異界への扉」であり、日本だと鳥居もその類いだろう。古川日出男著「聖家族」には鳥居が出てくる。かなり重要なキーワードとして古川日出男さんも「鳥居」をある種の「ゲート」として物語に挿入している。彼岸と此岸を繋ぐゲートとして。神話体系の中にそういうものはいっぱいあるはずだし、「ゲート」ってのがある種の時間の狭間だとするとそこに堕ちた人が神隠しに合うようなそんなことにも通じるのかもしれない。


 この作品と「多重人格探偵サイコ」が連載していた角川の「コミックチャージ」が廃刊になったが、「八雲百怪」の続きは夏ぐらいに刊行される角川の新しい漫画誌でやるらしい、えええと「多重人格探偵サイコ」はどうなるのなら? もう終わりかけだから終わらして欲しい。

八雲百怪 (1) (単行本コミックス)

八雲百怪 (1) (単行本コミックス)

北神伝綺 (上) (ニュータイプ100%コミックス)

北神伝綺 (上) (ニュータイプ100%コミックス)

木島日記 (1) (ニュータイプ100%コミックス)

木島日記 (1) (ニュータイプ100%コミックス)

「捨て子」たちの民俗学 小泉八雲と柳田國男 (角川選書)

「捨て子」たちの民俗学 小泉八雲と柳田國男 (角川選書)

聖家族

聖家族