「SOMA」カフェで地元の友人と飯を食い話をする。今月の末、来週には彼は地元に帰る。かと言って寂しいという感情はさほど湧かない。冷たい人間なのかもしれないが、会えないというわけでもないし、高校の友達は彼を含めても少数しかいないし帰ればその連中と会うのだから寂しいという感傷は特にはない。
「東京」という街というかエリアは「来る者は拒まず去る者は追わず」だから。自分の意志で来て帰るのも自分の意志で決めればいい、最優先されるのは自らの意志でなければならない。だから、僕は此処に残るし、彼は此処から元いた場所へ戻る。
出会いとか別れは基本的には対として存在し、どちらも唐突にもやってくるし、静かに闇が降りてきて月が光るように次第に訪れることもある。
僕は今年祖父を亡くしたが、そこに悲しみは思っていた以上になく、そのことが逆に悲しくもあったのだけど、祖父の状態を去年帰った時に見舞った時点で長くはないと感じていた。半身不随で流動食しか食べれなくなっていた祖父は、あまり祖母以外の人を認識できなくなっていたらしい。
僕が手を握るとほぼ声に成らない声で僕の名を呼んだ、それで一緒にいた祖母と父は泣いた。しわしわの温かい手を握りこの手が冷たくなる日が近いうちに訪れるんだろうと感じた。それは匂いに似た、死の訪れのような感覚。
だからバイト中に母から電話があった時点で(その時は取れなかったけど)死んだなと直感でわかった。葬式で泣いたのは祖父の不在よりも祖父を失ってもなおこちら側にいる祖母や父が泣いているのを見て泣いた。
出会いと別れということに関しては高校とかぐらいからある種の冷めた考えかたをしていた。出会った人間は絶対に全員別れるし、すべての人は当たり前に死ぬと。そう考える方が自分にとっては楽だったし、息を吸って吐くように出会って別れる、でも出会いー別れの間に各自それぞれの関係性の中で物語というメモリーが存在してて、そこで生まれでた想いというものは永遠の中に留まってほしいなとは思う。
その時の大切な感情に関しては氷付けのマンモスのように、閉じ込めて時間の片隅に封印してしまえばいい、ただ思い出して眺めるだけのそういうものに。氷を溶かして触れようとすれば氷を割って取り出そうとすれば中身のマンモスは粉々に砕ける、手に取って懐かしむことはできない。
縁というものはある人とは繋がって行くし、まあそこには多少の努力とかもあったりはするんだけど。ここ数年でのシンクロシニティでいろんな人と出会えているのは自分が動いていろんな場所に赴くということだけは楽しんでいるからなんだろう。
それにしても人と人はいろんなことを通じて繋がっていると感じる時に生きてるんだなあって思う、僕が孤独をそんなに感じないのは繋がりを信じれているからだろう。
古川日出男著「沈黙/アビシニアン」の「アビシニアン」を読み終える。今年とりあえず古川さんの刊行されている小説はほぼ網羅した、デビュー作「13」以前に出された本当のデビュー作「ウィザードリィ外伝2」以外は。
「アビシニアン」はある種の「家族」の話だった、「ゴッドスター」に近いものがある、「アビシニアン」という猫のワードがある種のキーで過去を捨てて名付けられて、名付けられたのだから、名付けたあなたは私を見つけたのだと。あとは「サマーバケーションEP」に出てくる挿話の顔を覚えられない少年がこのデビュー三作目にして出ていた。
古川さんが「俺はずっと同じことを書いているよ」みたいなことをインタビューか何かで語っていたような気がするが、それは「沈黙/アビシニアン」を読み終わった時に少しだけ感じれたというか触れたような気がした。だから10周年に刊行されたのが「聖家族」なんだろうと。
野良猫というほどではないが、塀の向こうのアパートの人がたまに餌をやっているので飼い猫なのかどうなのか?
魚肉ソーセージでいつも煮干しで釣っていた強欲(と名付けた猫)の子猫を玄関で釣って遊んでいる。キッチンのシンクに入れるとそこから床までの高さもまだ怖いらしく逃げ出さないので遊んでみる。
もう一匹黒いのがいるのだが恐がりで敏速なので捕まらない、この茶白はある意味愛想があって鈍臭い。恐らくは黒い方が生き延びる確率は高いのだろう、恐がりで敏感なやつほど生き延びる。まあこの子はというかこの家族は僕の物語に挿入されるのだけど。
子猫が冬を越せる確率はどのくらいなのだろう。
園子温著「愛のむきだし」の小説も読む。やっぱり映画で観たあの衝撃がずっと余韻として残っているので小説はインパクトに欠けるというか映画観なかったらまた違うんだろう。園子温監督だから作れる映画はやっぱり映画館で観るべきなのだ。
地元に帰る友人からThe Kooksとのライブチケットを譲り受けた。
The Kooks - Always Where I Need To Be
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