Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『エッグ』





 野田地図『エッグ』を東京芸術劇場で鑑賞した。最後のほうで自然と涙が流れてしまった。圧倒的だった。物語を直接的ではなく比喩を用いて層をいくつか重ねる事で強度を増していた。しかもその根底に流れているテーマと描き出してしまっているものはとても重い事柄でもある。いかにポップで包みこむか。
 『エッグ』を観ながら思ったのは去年鑑賞した蜷川幸雄演出・古川日出男戯曲『冬眠する熊に添い寝してごらん』だった。時間を越えていくこと、そこで描かれているものは2011年の3月以降に僕らが生きている世界がどこから繋がっているのかを意識せざるえないものであるということ。
 想像力と歴史という時間が舞台の上で昇華されて僕ら観客はすぐに引き込まれてしまう。『エッグ』はエッグという競技があってということしか知らずに観たらそこに仕組まれている核が終盤に出てきた時に打ちのめされてしまう。これという答えを提示はしない。観客に考えろと突きつけてくる。
 与えられた答えや正解を示されなければ納得しない人がいるとは聞くがそれで納得するということがその人の思考停止に結びついてしまうということが最も恐ろしい。ああ、それは戦前と戦時中やたぶん今の時代もそうなのだ。思考停止させることで強行的にみんなが求めたのだからと決めれることの怖さ。
 思考停止させたいヤツらの好き放題にさせないための個人の想像力がいかに必要なことなのか。とんでもなく素晴らしい演劇だった。演劇の持つ強さが前面に出てきていて野田秀樹という作家はギリギリのところでずっと戦い続ける事を選んで前線にいる人なのだと思った。
 音楽が椎名林檎でちょっとゴス系で椎名林檎的な要素を持っているミュージシャンを深津絵里さんが演じていた。なんかすげえ好きなものが混ざり合いすぎていた。妻夫木くんの役は前に見た『キル』のように物語の推進力な感じ、藤井隆さんを舞台で観たのは初めてだけど新喜劇でずっと観ていたので嬉しい。