Spiral Fiction Note’s diary

ライター&「monokaki」編集部スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「週刊ポスト」で「予告編妄想かわら版」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉ーーあだち充と戦後日本の青春」を連載中です。

『ひそひそ星』初日舞台挨拶


監督:園子温
脚本:園子温
プロデュース:園子温
プロデューサー:鈴木剛、園いづみ
出演:神楽坂恵遠藤賢司、池田優斗、森康子ほか







園子温監督が2014年に設立したシオンプロダクションの第1作として、自主制作で完成させたモノクロSFドラマ。園監督が1990年に執筆した脚本を、妻である女優・神楽坂恵を主演に迎えて映画化した。類は数度にわたる大災害と失敗を繰り返して衰退の一途にあった。現在、宇宙は機械によって支配され、人工知能を持つロボットが8割を占めるのに対し、人間は2割にまで減少している。アンドロイドの鈴木洋子は、相棒のコンピューターきかい6・7・マーMと共に宇宙船に乗り込み、星々を巡って人間の荷物を届ける宇宙宅配便の仕事をしていた。ある日、洋子は大きな音をたてると人間が死ぬ可能性のある「ひそひそ星」に住む女性に荷物を届けに行くが……。共演にミュージシャンの遠藤賢司、映画「at Home アットホーム」などに出演する子役・池田優斗。(映画.comより)


 いよいよ公開になった園子温監督最新作。去年の東京フィルメックスで一足早く観ているのだがやはり映画館で観たいと思って新宿のシネマカリテに行く。今作は園さんにとって最新作ということではあるのだけどこの『ひそひそ星』は25年前に園さんがメジャーデビュー作として取り組んでいた作品だったりする。しかし、頓挫したというか作られることはなく家には大量の絵コンテがあり、引っ越しの度に新しい家に持って行かれたという。園さんは自宅だったアパートが火事になったりとかで台本とか原稿が残っていない作品もあるのに、この作品はその度に生き延びて撮られるのを待っていたかのようにも思える。
 上映後の舞台挨拶で奥さんの神楽坂恵(プロデューサーである園いずみ)さんと一緒に立ち上げたシオンプロダクションの第一作になったという話をされていた。だから、これで再スタートみたいな気持ちがあるということに言われていて、最近のウェブのインタビューではもう原作ものは撮らないと言われているので、シオンプロダクション設立以降は基本的には園さんのオリジナル作品をどんどん作っていくみたいですごく楽しみでしかない。


 今作はモノクロで地味な作品に思える、園さんといえばエログロとか血が吹き出るというイメージがある人が圧倒的に多いと思うが、あれは嫌いではないと思うが世に出るためのある種の戦い方でもあったのだろう。実際にそれで園さんの名前は一躍有名になって日本映画の救世主みたいな感じになっていったのは間違いではない。しかし、『部屋 THE ROOM』と同時期か近い時代に書かれたこの作品もアートに寄っている部分がある。こちらも園さんの資質というかやりたい部分ではあるはずだ。おそらく、こういう作品を撮れば反対側の方向を撮られるだろうし、多作な園さんは一作ごとイメージややりたいことを明確にして違う園子温を見せつけてくることになってくるだろう、それも含めてシオンプロダクション作品が楽しみで仕方ない。


 『ひそひそ星』では福島の15キロ圏内立ち入り禁止区域の風景や『希望の国』で撮影に協力してもらった取材をした方々も作品に出てくる。福島の風景が語りかけてくる物語、それだけで成り立つものは何かあるのだろうかと思っているとかつて書いたSF映画と溶け合った。
 スクリーンに映し出される風景は現実だ。しかし、とてもフィクションみたいだ。草がぼうぼうに生えている草むらに押し流されてきた船がある、誰もいない町、廃墟になった建物の部屋に溜まった水溜り、一瞬だけモノクロからカラーになるワンシーン。最後の人生の走馬灯のような影絵の惑星。
 

 映像はモノクロだが、音は非常に鋭利に響いてくる。二回目だから前よりも意識的に音を聴いた。福島の風景が語りかけるものとかつて園さんが書いた物語が解け合っていてそこに音が非常に重要なものとしてある。大きな声で大事なことが言えなくなる日がいつか来るかもしれないと思って、ひそひそ話す物語をかつて書いたと舞台挨拶で言われていた。今そんな時代になったとも。


 劇場でいい音で観て欲しい一作です。


園子温、構想25年の新作で初心に「ゼロからの出発」
http://www.cinematoday.jp/page/N0082626


 来週には大島新監督『園子温という生き物』をまたシネマカリテで観てこようと思います。