Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』


大根監督『SUNNY 強い気持ち・強い愛』をば。大根作品だし伊賀大介さんスタリストで参加してるし、観ないとなあと思いつつ観てなかった。最後のかつてのサニーのメンバーが斎場で踊るシーンの前に哀しいほどに、彼女たちの現在が浮き彫りになる辺りは辛い。夫たち男性はまるで頼りにならずに金銭的にも追い詰められている数人を救うのは余命一ヶ月で亡くなってしまった芹香であり、現在の根本的なものを突きつけてくる。と同時にその後のエンディングに至るまでのダンスによる高揚感と多幸感でそれを覆い隠しているようにも見えなくない。
ダンスが小学校でも授業に取り入られたのは華やかさに満ちたように見えた90年代が終わった後のゼロ年代以降だったこと、エグザイル的なマイルドヤンキーのような都市部ではなく、地方で幅を利かせるような人たちが好むものが席巻したのは繋がってるんだろう、たぶん。
サニーというかつてのコミュニティが再集結することで、家族や親族には救われない人が救われるというのはたぶんインターネット黎明期にあったような趣味なんかが共通で繋がるゆるやかだけど、信頼がおけたものに近いのかもしれないなあ。
プロデューサーは川村元気さんだが、この作品をリメイクする時に男子版として早見和真著『95』も同時に作ればよかったのに。『95』はタイトルまんまな時代の話で『サニー』同様にいけてる男子高校生グループに主人公が入って仲間に恋に青春もの。野島伸司脚本『未成年』が作中で大きな意味を持つことになる作品でもある。『サニー』と『95』一緒にやって、90年代リバイバルに止めを指してほしかったなあ。
大きな物語を共有できたのが90年代までだし、三浦春馬がレッドウィング履いてるし、とか反応できるのもロスジョネ最後尾まででしょ。
わりと冒頭に主人公の奈美の引きこもりで90年代にエヴァにハマっていた兄貴について、現在の入院中の奈美の母が「あの子は今モー娘。にハマってんねん。なんか原点回帰や!ゆうて」みたいな台詞があって、この二十年近くのサブカルチャーを一言で言わせた大根監督はさすがだな、と思いました。