Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『blank13』


監督・齊藤工
原作・はしもとこうじ
脚本・西条みつとし

出演・高橋一生(松田コージ)、松岡茉優(西田サオリ)、斎藤工(松田ヨシユキ)、神野三鈴(松田洋子)、大西利空、北藤遼、織本順吉村上淳神戸浩伊藤沙莉川瀬陽太、岡田将孝、くっきー、大水洋介、昼メシくん、永野、ミラクルひかる、曇天三男坊、豪起、福士誠治大竹浩一細田香菜、小築舞衣、田中千空、蛭子能収杉作J太郎波岡一喜森田哲矢榊英雄金子ノブアキ、村中玲子、佐藤二朗(岡宗太郎)、リリー・フランキー(松田雅人)

俳優の斎藤工が「齊藤工」名義でメガホンを取った長編監督デビュー作。放送作家のはしもとこうじの実話を基にした家族の物語が描かれる。13年前に突然失踪した父親の消息が判明した。しかし、がんを患った父の余命はわずか3カ月。父と家族たちの溝は埋まることなく、3カ月後にこの世を去ってしまう。葬儀に参列した人びとが語る家族の知らなかった父親のエピソードの数々によって、父と家族の13年間の空白が埋まっていく。父親が失踪した主人公を高橋一生、主人公の彼女役を松岡茉優、失踪した父親役をリリー・フランキー、母親役を神野三鈴がそれぞれ演じ、斎藤も主人公の兄役で出演。(映画.comより)


 シネマート新宿にて鑑賞。ネットで全席売り切れたようで、立ち見のお客さんもいた。
 斎藤工高橋一生が出ているとなれば注目度が高いのは当然かとは思う。映画自体の時間は短く70分ほどなどでちょうどいいと思った。
 話が蒸発して行方不明になった父の葬式がメインなのでそこまで長くはできないというのもあるし、コージとヨシユキの兄弟の少年、思春期時代を長く描かなかったのがよかったと思う。彼らがどういう状況だったのか、弟であるコージと父の野球に関するやりとりだけがメインで、ベースラインにあったので最後にうまく繋がっている。

 葬式という人生最後の大舞台、と言えるのかどうかわからないが、葬式でその人が一体どういう人だったのかわかるとはよく言われる。冒頭のコージの彼女のサオリが受け付けをしているシーンは蒸発した父というキャラのために対比になるものがすぐ隣にあり、それがその後の葬儀に来た父の少数の知り合いたちのキャラクターが浮かび上がるために必要だったのだろう。同時に対比で使われるもう一方には最後にオチがつけられているのは齊藤監督のユーモアだったり、『MASKMEN』をやっていることや出演者にお笑い芸人が多いことなども含めてわかるような気がする。

 実際に葬儀に来た父の友人たちが、それぞれに話すことになる父との関係やエピソードは次第に笑えてしまうものになっていく。岡宗は司会進行的でツッコミという役割。松岡茉優伊藤沙莉の『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』コンビというのはドラマの「映画の男」の回で斎藤工が出演したことの縁なのかもなって思った。『MASKMEN』で組んでいるくっきーは出オチに近い出演だが、そういうものが次第に効いてくる。僕が観ている日本映画で3本に1本ぐらいの感じで(感覚的に)川瀬陽太さんが出ているような気がする。今日はオカマを演じてた。次期名バイプレイヤー の一人には間違いない。同時にリリーさんのもはや名優としての存在感ってなんなんだろう。

 許す、許せない。愛憎が入り混じる肉親や恋愛関係にある人の想いは答えなんて早々に出ない。終わりの方での兄の父への想いと、弟の想いはとてもよくわかるし、多くの人が共感するものだと思う。親しい人が亡くなったばかりの人が観ると思った以上にシンクロしてしまう作品だろう。