さすがに三連休の中日で公開すぎだったのでほぼ満席に近いTOHOシネマズ渋谷の客席の9割は女性。こういう作品を観に来る時にジャニーズの強さを改めて思い知るわけだが。
原作は島本理生さんの小説だが未読。行定勲監督は2000年代初頭の『贅沢な骨』『GO』『ロックンロールミシン』がとても好きだった。それ以降はあまりこれが好きという作品はない。もともと文芸好きというか純文学とかの小説を原作にした映画が多い行定監督であり、今作も何年も前に発表された恋愛小説の映像化。キャスティングは話題性があるし、強そうだ。
恋愛小説と謳われているが、松潤と有村架純の主役コンビはそれぞれがこちら側(此岸)から向こう側にいきたいと思っている時に出会い、彼女は彼に救われることで生きようとし彼に恋をする。彼もまた私生活がどん底だった日々に彼女に出会い、彼女に頼られることで救われていた。こちら側に居るためのギリギリの場所で二人はいた。だからこそ、吊り橋効果のように気持ちが好きになっていく、あるいは勘違いしていく。しかし、日々がすぎてそれぞれがきちんと前に歩き出せればその勘違いは恋ではなかったのだ、ということになっていく。そうやって抱えていた想いが溢れ出して別れていく。
誰にでも起こりうる出来事。依存するかしないか、それが恋愛につながるのかそれも含めないと恋愛ではないか、観客ごとの価値観にもよるだろうし、どうしても踏ん張れない時に居てくれた人に想いを寄せることもある。二人がそれで続いていければきっと問題がないのだけど、ある時期になればやはりそれは恋に似た何かだった、とても大事でかけがえないのものだったとわかる。だけど、人は過去だけを抱えては生きていけない。
『贅沢な骨』がまた観たくなった。やっぱり行定勲監督作品ではそれが一番好き。