Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』


 人は生きていくといろんなものが損なわれていく、もう損なわれてしまった想いやものや人たちは永遠に元には戻らない。人には乗り越えられないことがある。戻れない、留まれない場所がある。同時に時間が経つことで許されたり癒されることもある、あるいはその逆もしかり。それもすべて生きていく中で起きる。進む時間の中でのみ起きうる。大きな出来事が起こらないように観ていて感じるのは、それらは当たり前に僕の人生に起こる事柄だから。愛とはかつてあった空間のなかにたたずみ、現在進行形のなかにはない、過去形のなかにしかない、いくつもの季節が通りすぎたあとに気づいて、もう触れられない。乗り越えられないものを認めながらも日々は死ぬまで続いて終わる。