Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『酒井若菜と8人の男たち』


 昨日のトークイベントで山崎さんが選んだベストアルバム(ジャケット)は『フェイクファー』で、これはもうなにもいうことがない、ということだった。フォロワーが増えすぎて今や当たり前になりすぎてなにが凄いとかなくなってしまったけど。でも、スピッツというバンド名もアルバムタイトル名すらもない。
スピッツ / 楓




 火曜日にてれびのスキマさんの新刊『1989年のテレビっ子』を読み、今日は酒井若菜さんの新刊『酒井若菜と8人の男たち』を読み終わった。
圧倒的な熱量と想いが綴られた一冊の書物はジャンルなんか飛び越えてきて、素晴らしい感動と畏怖が残る。
 わかってるけど、わかっていないフリをしながら異能な人たちの坩堝なメルマ旬報チームの中に素知らぬ顔でいるので、こういう形になって眼前にして、それを読み終わるとやはりダメージをくらうし明確にわからされる。そういうものがどれだけ僕の中に沈殿して、のちに浮上するかがすごく大事なことだということもわかる。



サンボマスター山口「会いたいと思った人って大抵会ってます?」
酒井若菜「はい。会ってない人はいないと思います」




 マギーさんから始まる若菜さんの本はインタビューしていく相手の流れというか掲載されている人の順番が読むスピードを加速させていく、マギーさんという兄、マギーさんと共犯関係に近いものを持ちながら潔癖にも見えるユースケさん、親戚みたいな感じもある板尾さん、メルマ旬報仲間でもあるサンボマスター山口さん、同世代の親友の佐藤隆太さん、他の人たちが
陰と陽だと陰なら完全な陽である日村さん、世間にはまったく言っていなかった岡村さんが病気休養中にやりとりしていたこと、そして我らが博士さん。どう考えてもおかしいほどの熱量が溢れ出ていてマグマみたいなものが読んでいてわかる、同時にマグマとは真逆な南極の氷みたいな冷静さみたいものを若菜さんは持ち合わせている。
 愛せる人や気持ちを託すことができる人は限られている、自分の想いは限度がある。想いがマグマのように熱いこととそれを客観的も見ることができる、それが一冊の本になっていることはやはり素晴らしいし怖い。怖いというと語弊があるかもしれないけど、形になるには様々な想いがあるから。僕はそこまで想いを出せるものを書かねばならない。メルマ旬報チームはやっぱり異能の人たちだからそこに紛れ込んでいられることは幸せなことでもあるけど、ずっと周回遅れみたいになっているのはイヤだし一番下な僕が突き上げないといけないとも思う。書くしかないし、インプットしたものをどうアウトプットしていくか。



『猫』
トタン屋根の隙間に猫がいて
昼寝をしている
風は強いが冷たくはない
猫は近づいて一瞥だけして
目を向けてまたすぐに閉じた
太陽はどこか寂しげだ
猫は眠りこけて夢をみている
どんな夢なのか知らないけど
空から魚が落ちてくる夢かもしれない
鰯は青魚じゃない
新鮮な鰯はヒカリものだから銀色に輝いている
猫が見る鰯の夢は銀色の輝きに満ちている
トタン屋根は昔そんな色だったかもしれない
猫は夢なんか見てなかったりするのかも
見ているのは空から魚が落ちてくる夢
いや、猫が空を泳いでいる夢かもしれない
風が吹いて猫を撫でていく