Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『星か獣になる季節』


最果タヒ著『星か獣になる季節』読了。縦書きではなく横書きなのに意味があると思う。文字が横に並ぶときに見える形(キャラクター的な)をかなり意識して書かれていると思う。同じ言葉でも縦書きより横書きだからこそわかる感覚、ひらがなが特に視覚的に。読むという行為は文字を見ることだから。最初の一篇『星か獣になる季節』は岩井俊二監督『リリイ・シュシュのすべて』を思い出してしまった。蓮見と星野の関係性のように。『星か獣に〜』はコミュニケーションと関係性についてふたりの地下アイドルファンの少年について書かれている。その後が書かれたもう一篇『正しさの季節』はふたりの少年と関係があったものたちの話。どこかに行ってしまった者と置いていかれた者の物語としてもこの一冊は読める。星(超越者)になるか獣(地に足をつけて生きる者)になるか。たいていのものは後者であり誰でもない自分を受け入れたくなくて誰か他者を軽蔑しながら自分の足元を確かめていた季節、それが十七才であり人を傷つけながらそれにより自分が傷ついてその痛みや血で安心すらする。見上げた星の輝きに絶望しながら咆哮(彷徨)している。僕らはその季節を通り抜けてきたがその残骸を抱えながら生きている。

星か獣になる季節 (単行本)

星か獣になる季節 (単行本)