Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『サッドティー』

 昨日の仕事終わりに渋谷の円山町ラブホ街の中にあるユーロスペースに行く。21時ちょい前からのレイトショー公開の今泉力哉監督『サッドティー』を観に来たんだが着いたのは19時前でとりあえずチケットだけ買っておこうと一階のカフェのとこから中に入ろうとしたら出て来たのが古川日出男さんたちがやっている『朗読劇 銀河鉄道の夜』を宣伝等でお手伝いされている浦谷さんだった。
 

『美澄の小部屋』『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20140309



 去年の郡山の古川さんの母校である安積高校での公演だったり諸々お手伝いされているのでそこにいく僕はやっぱり多少は顔見知りなっているのだった。
 3月にユーロスペースでの特別先行上映も素晴らしかったが7月から同じくユーロスペースで『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』がレイトショー公開されるのでその打ち合わせで来られていたという偶然だった。で、『サッドティー』の上映まで二時間近くあったので用事を済ました浦谷さんと一階でお茶をば。試写状もらったけどできたのほんの昨日らしいけど平日の昼間でいけねえ〜。


 古川さんや映画のことだったり、浦谷さんが関わっているロロの新作とかの話を聞いて、ロロ観に行かなくちゃって思って新作観に行こうと思った。古川さんや舞城王太郎さんの影響を受けている劇作家とは聞いてて古川さんの15周年イベントでちょっと観ただけなので丸ごと演劇観てないので楽しみでもある。


ロロ vol.10『抱きしめてトゥナイト』
http://lolowebsite.sub.jp/ASAHI/tonight


 山戸結希監督『5つ数えれば君の夢』も宣伝で入られていたしとか今回観に行った『サッドティー』もだけどスポテッドの直井さんの話とかして、僕は一回ワタリウム美術館で伝説(?)の西島大介さんの関係者しか来なかったサイン会&チェキ会の時にいらした気がしてるんだけど違うかな。でもそういう流れで西島さんの話とかも出たりとかして、面白そうな事をしている人たちがそういう繋がりとかやっている人が被ってしまうのは仕方ない事なんだろうなって思う。


 浦谷さんは『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』の試写ハガキをあと誰に出せばいいかなって僕に聞いたりとかしていて、それで書いたりとかしながらお話をしていた。
 演劇の一回性とツイッター相性のこととか映画や演劇はお客さんの層も違うしアプローチの形も全然違うんだよって教えてくれて、そういうもんなんだなって思いながらお茶をしていた。



監督・脚本/今泉力哉
出演/岡部成司・柏木芯、青柳文子・青木棚子、阿部隼也・朝日隼也、永井ちひろ・加藤夕子、國武綾・土田緑、二ノ宮隆太郎・町田純次、富士たくや・ボンさん、佐藤由美・今川雅子、武田知久・早稲田高義、星野かよ・松本園子、吉田光希・橋本宗、内田慈・甲本夏ほか



「こっぴどい猫」「終わってる」の今泉力哉監督による長編映画。二股を解消したい映画監督とその2人の彼女、喫茶店のアルバイトの女の子とマスター、恋人へのプレゼントを買いに行ったお店の店員に一目ぼれしてしまう男、元アイドルを10年間思い続けているファンと、そんなファンの存在を知り会いにいこうと決意する結婚間近の元アイドルなど、さまざまな恋愛模様を通して「ちゃんと好き」とはどいうことかを考察していく。映画専門学校「ENBUゼミナール」による劇場公開映画製作ワークショップ「CINEMA PROJECT」の第2弾作品として製作された。2013年・第26回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門出品。(映画.comより)




 窪さんが文章寄せてる『サッドティー』パンフ。
 恋愛してなくてもバカな僕らは恋愛しているとさらにバカで滑稽ではしたなく、わがままで愛しくて、やっぱりバカみたいだけども、でも、それでいいわ。


なんでもないエピソードで血を通わせていく
https://cakes.mu/posts/5842
 窪さんのcakesインタビュー二回目なんだけどね、ふとした、どうでもいいエピソードが人の陰影を作るってのはそうなんだろうなあ。と思ったし今泉監督の作品に漂うものと呼応しているような気がした。





 監督である柏木は二股をしている。彼女の夕子はそのことを知っているし浮気相手である緑も彼女がいるのを知った上で付き合っている。冒頭シーンの謎の公園の競歩している人ものちにわかるが、柏木の友人である朝日はずっと十年間想い続けている人がいる。柏木は緑の元にいっていて東京にやってきた朝日は友人の彼女である夕子と二人きりで家に泊めてもらう。
 夕子のネイルサロンの同僚である夏は目に痣を作りながらも暴力を時折ふっているであろう彼氏との結婚が近づいていて専門の後輩である緑と園子と部屋飲みをしている。園子は柏木が好きだったが柏木の友人である早稲田と付き合っている。柏木がよく行くカフェでバイトしている棚子は暇だからバイトを掛け持ちしていてその古着屋に園子に誕生日プレゼントを買いに来た早稲田はプレゼント用のワンピースをその場で着てこんな感じですよとフラッと言えて着てしまう棚子に一目惚れしてしまう。




 基本的に二人になって話しているシーンで構成されているというか三人いても呼び出されてとかどこかいなくなったり電話しにいったりとか、最終的にいるんだけど存在感がないから画面から消えていくとか、二人でいる時に本音というか話ができるみたいなものが根本にあるんだろうか。
 今泉作品は初見なのでどうなのかがわからないんだけど、三人いると意識が自分以外の二人にいかないとだし会話の流れとかあいづちとか二人よりも情報量の多さや人間関係の面倒さみたいなものがあるからシンプルにはならなくなるし見栄もはれるしどちらかと合わせれば違う意見だってその場でオッケーになってしまうかもしれない。


 シーンの変わり目だとか二人の間にある「間」とか会話の少しだけズレているような本質を突こうとして本音を言おうとするが故にこんがらがるような会話で劇場はかなり笑っていた。
 朝日と夕子のパッとなんて名前に見えるかとかのあの間は映像で見ないと笑えないものだろう。
 文章にしても絶対に伝わらない、そういう間があって、わっかるわあ、そうそうそういうことってあるよねとか言い出した自分が笑いかけてしまってそれを察した相手も笑い始めてしまうから話になってないんだけど一種の連帯感あるんだけど実はなんにも繋がってはないんだけどっていうそういう人と人の間にある「間」みたいなのものをうまく撮ることのできる作家さんなのだなと思った。
 映画に出てた永井さんと國武さんって園さんがやった『グレイテスト・ヒッツ・テラヤマ』に出てたのか、パンフに書いてあったけど。思いっきりワタリウム美術館で観てるわ。


 最後の海のシーンで先週ニコラで今泉さんとお茶した時に聞いてたのもあって撮り方というか画が「ああ、こういうことだったんだ」ってわかった。なにかの作品観てそういう海の撮り方はしたくないって思ったからああいう撮り方になったって言われていて。
 劇中で話している二人の間とか言葉で笑ってしまうのは「ああ、わかる」っていう感じで自分でもあるし知り合いでもあるような感じがあるから。
 群集劇というか各章というかそれぞれの関係性を描いていく流れがあって最後の主要登場人物が同じ場所に居合わせるあの感じがすごく好きな感じ。まあ、大好物なものではあるんだよね。
 人との繋がりを求めるのとは少し違うけど巻き込まれるというよりも冒頭の競歩でずっと円を書くようなものみたいに繋がってしまう、円環みたいにその円状にいろんな人物がいて時折同居してしまうようなこと。それぞれの想いが変わってしまう。
 付き合っている好き同士だった二人の気持ちの差異が生じてくる、だって「好き」っていう言葉は各人違うし想いとか熱量とか意味とかなにがしたいとかどうされたいとだとか違うのに言葉にしちゃうと「好き」なのだから問題だし、僕らはいつだってそんなわけで同じ関係ではいられないんだ。



 棚子を演じた青柳文子さんはなんというか不機嫌な表情とか素敵で、それは一番あの中でモテそうなのにそうではなく、彼らを見ている衛星のようだった。
「すでに何もかも持ち、そのことによって何もかも持つことを諦めなければならない子供達。」という『リバーズ・エッジ』の文章が浮かんだりした。とツイートしたらご本人が反応してくださった。青柳さんも岡崎京子作品好きなんだって。僕としては素敵なミューズということと青柳さんがなんだか岡崎マンガにいそうに見えたんだ。


 最近の若手の映画監督は半径数百メートルの映画が多いと言われたりするけど、大きな出来事は起こらない、二股しているしそれ許してるし付き合っている人いるのに一目惚れして別れちゃうし十年間思い続けてた人がいたのにその想いは一夜でふっとぶし、それで反撃にあってるのは爆笑ものだけどこの作品は何かがすでに終わっている所を描いていて始まる前の所で終わっているからそういう言い方もまた違うし、日常における息づかいだとか並んで話していることだかとそういうのをきっちり撮りたいしやりたかったんだろうなって。だから笑ってしまうし思いっきりグサって刺さるとこもある。
 二人で話してるシーンの間とかそういう時にウトウトしちゃう時もあったんだけど、実際僕も最後の柏木みたいに寝ちゃう人かもしれないなって思ったり。


 好きっていったい何なんですかね?


 本当にわかんなくなるけど考えて答えが出るなら誰も人の事を好きになったりしねえんだろうし、わかんないから知りたくて遠ざけて傷つけて笑いたがって一緒にいようとしてなんだか本当にバカみたいだけどバカみたいな想いが時々波のように打ち寄せて来てはそこに漂うこびんを波際で誰かが手に取るように、だけど手に取って開けたこびんの中のメッセージを読めるとは限らないし伝わるともいえないのだけど、僕らはバカになってさらにバカになると届く事のみを祈ってしまう。相手のことを考えているようで実は考えてないような、でも、時折届いたりもする。そんな日々を暮らしている。

ミグラード 朗読劇『銀河鉄道の夜』

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聖家族(上) (新潮文庫)

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冬眠する熊に添い寝してごらん

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こっぴどい猫 [DVD]

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