監督・呉美保
キャスト・綾野剛/佐藤達夫、池脇千鶴/大城千夏、菅田将暉/大城拓児、高橋和也、火野正平他
芥川賞候補に幾度も名を連ねながら受賞がかなわず、41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の唯一の長編小説を、綾野剛の主演で映画化。「オカンの嫁入り」の呉美保監督がメガホンをとり、愛を捨てた男と愛を諦めた女の出会いを描く。仕事を辞めブラブラと過ごしていた佐藤達夫は、粗暴だが人懐こい青年・大城拓児とパチンコ屋で知り合う。ついて来るよう案内された先には、取り残されたように存在する一軒のバラックで、寝たきりの父、その世話に追われる母、水商売で一家を支える千夏がいた。世間からさげすまれたその場所で、ひとり光輝く千夏に達夫はひかれていく。しかしそんな時、事件が起こり……。(映画.comより)
綾野剛、初めて体験した「作品に愛される」ということ
http://eiga.com/movie/78908/interview/
テアトル新宿にて。サービスデーだったのもあったのか水曜日の11時の回だが八割形ぐらい席が埋っていた。年齢層は高めだった。
綾野剛ファンが多いのだろうと思ったのだが高齢と言っても五十代や六十代前半な人が多い印象だったのでこの映画が醸し出すものなのか原作者である佐藤泰志を読んでいた世代なのか僕にはいまいちわからなかったが客入りはよさそうだ。
『愛の渦』を観に来た時に予告観て帰りに原作の小説を買っていた。原作の佐藤作品はこれが始めてだった。映画化されて話題になっていた『海炭市叙景』も未見で未読だったのでどういう作家さんなのかまったく知らなかった。
wikiで見る限りだとデビュー作として刊行されて芥川賞候補作になった『きみの鳥はうたえる』が発売されたのが僕の生まれた年の僕の生まれた月で佐藤さんが自殺されたのが1990年なので純文というか小説をわりと熱心に読み出したのが二十代になってからだったのでつい最近まで『海炭市叙景』が映像化されるまで名前も知らなかったのだった。
読んでみると正統派(と言っていいのか?)な純文学の書き手さんであって中上健次の小説の読後感に近しいものを感じた。僕の勝手な感想だがこの手の小説はなぜか書き手が自殺していると聞いても「そうだろうな」と思わせてしまうものがある。あれはなんなんだろうか。
小説を書く事で寿命を削ってしまっているというか書くために自死に自らを追い込んでギリギリの崖の上で書き続けて最後は自分の物語を自分で終わらせてしまうような雰囲気が漂う、いや漂うというよりは読者にそうなったことがわかってもなんとなくその予感をさせてしまう(実際にはそのだいぶ前に亡くなられているにもかかわらず)のだ。
たまたまだが、昨日三島由紀夫賞候補が発表になった。僕は坂口恭平さんの『徘徊タクシー』が候補作になっていてテンションが上がったのだが一度しかお会いしてないけど『メルマ旬報』連載陣だしというのもあった。
水道橋博士さんと初めてお会いした園子温監督『希望の国』試写帰りの時に車で家まで送っていただいた車中の中で激プッシュされて帰りにTSUTAYAに寄って買ったのが坂口さんの『独立国家のつくりかた』という新書だった。
で、僕はその『徘徊タクシー』掲載の『新潮』買ってたけど読み損ねていたので鞄の中に入れて映画館に行って冒頭部分を始まるまで読んでいたのだけど、今佐藤さんのwiki見てたらこの『そこのみにて光輝く』は第二回三島由紀夫賞候補作だった。マジか、このリンクというかシンクロは。
『そこのみにて光輝く』は原作にあった濃厚さ、家族というものでいろんなことを諦めた女と自分の責任で人を死なせてしまって漂うようになにもしないでいる男との出会いを描いているが、原作の後半部分とかはカットされうまく映画用の尺というか脚本で再構築されている印象を持った。
タバコずっと吸っていて酒をずっと飲んでいるという意味では近年稀な作品なんじゃないか、邦画ではあまり記憶にない。
綾野剛はやはり佇まいがよい。ボソッと話す感じが感情をほとんど出さない朴訥な感じがするけど感情が爆発した時や想いが高まってからの行動原理はまっすぐなので魅力だ。そのためにはタバコのたゆたう紫煙は効果的に画面に映えている。
今はNHKで『カーネーション』のドラマの脚本であった渡辺あやさんが書いている『ロング・グッドバイ』にも出演していて、こっちはダメな優男みたいな役で抜群に似合っているんだけど綾野剛の時代というか一気に知名度も上がっているしいろんな役をして注目度がさらに上がっている。すごいなあ。
昔は、安達祐実世代、タキツバや柴崎コウと同学年と言ってたけど今や尾野真千子&綾野剛カーネーションコンビの方がわかりやすいっつう時代の変化を感じますな。ちなみに池脇さんも同学年。
池脇千鶴はデリテートな役だったはずだけど潔いというかこういう女性いるんだろうな、いや彼女が演じた千夏の哀しみが滲み出ているようで素晴らしくこの映画を骨太なものにしていた。性的なシーンをたいてい引き受けているんだがしょうもない恋愛ドラマや性愛について描けない作品やそういうものはできませんな感じの女優さんが多いんだろうけどやっぱり魅力的な女優さんだ。
菅田将暉は『仮面ライダーW』でのフィリップの時とは打って変わって『共喰い』にも出てたんだっけ、映画は未見だけど小説は芥川賞受賞後に読んだ。なんかダメな中上小説みたいだなって思ったのが本音だった。映画を中上健次影響を受けているであろう青山真治監督なのはそうなんだろうなって感じであまりにも観る気がしなかったのと青山監督の『Helpless』『EUREKA』『サッド ヴァケイション』の北九州サーガで充分じゃないかって気持ちもあった。
中上臭ハンパないじゃん、フォークナーの影響下にある中上作品に影響を受けているのもわかるし映画も素晴らしいのにその青山さんでさえも原作ものじゃないと映画も撮りづらいのかなっていうなんか残念感が先に来てしかも『共喰い』ならいいやって。で、『EUREKA』の小説は三島賞受賞してんだけど。
拓児のあの軽いバカな感じ、歯が汚いとことかきちんと演出されていて素行が悪いけど自分のせいで家族とかが嫌な想いやなにかをされたら何も考えずに向かっていくとか暴走しちゃう辺りはあの陽気さと相まってすごくよくて彼はこういう役でどんどん進化しているんだなって思った。笑顔の感じもいいしこれからもっといっぱいたくさん作品に出て行くんだろうな。
脇を固めている火野正平さんも高橋和也さんも面構えもよくてこの嫌な感じをより引き立てていた。千夏の家族から逃れられない感じとか家族の問題によっての彼女の諦め、ただその要因のひとつである弟が連れてきた達夫によって彼女は再生するようにすべてを引き受けて断ち切ろうとする彼と二人で家族を少しだけ光の方へ向かいだす。
作品自体は素晴らしく重厚だ。明るいタッチでもないしシリアスというか観終わってハッピーという感じにはなれない。ヒリヒリとする感じというか世界の嫌な感じを描いているけど観て損したみたいなことにならない。暗闇の先の光まできちんと届かそうとしている。
上映前にツイッターでキングコングの西野さんが今日は吉本本社にずっといますとツイートしていて単独ライブの日比谷公会堂のチケットをずっと手売りしているのを知っていたので観終わったら行こうかなって思っていた。
観たら重厚すぎたので明るい感じ、お笑いのほうを求めたくなったのでいざ往かんと思ったらテアトル新宿から吉本本社のもともと学校だっけみたいな場所まで徒歩数分だった。ツイッターで西野さん宛にツイートして本社から出てきていただいた。
西野さんから手売りチケット購入。買った人の写真を取っているので僕も撮っていただく。
西野さんのツイートより
吉本本社なう。
『メルマ旬報』で『碇のむきだし』を連載されている碇本さんが独演会のチケットを買いに来てくださった。
語り口が丁寧で柔らかくて、面白い人の空気が出てたなぁ。
ありがとうございました。
名刺をお渡ししてご挨拶。名刺持ってないんでって言われたけど芸人さんは顔と存在がもう動く名刺そのものだから。きちんと『メルマ旬報』でという流れでわかっていただけたみたい。すごいメルマ旬報力w 同じく連載陣というだけなんだけどなんか嬉しい。
映画を観てきた話から最近西野さんが観たという『ボルト』をオススメされた。ので近いうちに観ようと思った。ディズニー映画だっけ、ピクサーの人がディズニーで作った犬のやつ。
気さくな感じの方だった。頭の回転の早い方々は話すスピードも気持ち早いような気が前からしているんだけど天才肌だとか言われてる新しいことをしている人は。西野さんもだし堀江貴文さんも宇野常寛さんも坂口恭平さんも山戸結希さんも他もたくさんいるんだけど。そういう人に会いに行けちゃう距離とかはやっぱ面白いなって思ってる。
僕は自分が凡人だとわかっているし自分が面白い人ではないのは重々承知しているので面白くないなって思ってそこにいるのではなく、面白い人に会いにいったり面白い所や場所、何か起こりそうな所にいって面白い方に流れるしかないと思っている。『世界がつまらないのは君のせいだよ』というキャッチコピーはこういう時にいつも思い出す。
家に帰って近所のニコラさんがオープンする16時に早々にお店に行った。展示とかもろもろされている熊谷さんという方がお店のカウンターにすでにいらして少しだけご挨拶した。古川日出男さんの京都のイベントとかを企画されているらしい。黒田潔さんとの展示とかもそうらしくて池尻大橋でやったやつ僕行ってた。
ちょっとだけ『徘徊タクシー』の続きを読んだ。ちなみに古川日出男さんも三島賞を『LOVE』で受賞している。
いつものアイスカフェオレとシュークリームを食べた。本棚の面出し二作の一作が変わっていた。
曽根さんに柚木麻子さんの新刊『本屋のダイアナ』を激プッシュされたので読もうと思った。
朝は郵便局に用事があったので九時前に家を出て帰ってきたのが18時ぐらいで普通に出勤しているのと変わらない感じだった。九時過ぎぐらいに世田谷郵便局から渋谷まで246沿いを歩いたんだけど途中トイレしにキャロットタワー行ったらTSUTAYAの壁面というかエスカレーター上ったとこのガラス面に『ジャイアントキリング』のデカいPOPがあった。新刊出たからキャンペーンかなと。
ちょうど歩きながら『文化系トークラジオLife』の今月テーマ「マイルドヤンキー限界論」予告編を聞いていたのだった。
ここで話出てるけどゼロ年代的なジモト風景を描いてきたクドカン脚本ドラマの集大成が『あまちゃん』なら次の時代を描く作家がもう出てくるよね。というか存在しててブレイクして時代が変わったなって思うのかあるいはもうそんな代表する作家は存在はできないぐらい細分化されすぎているのか。
あと、これ聴いてて思ったんだけどサッカーとか野球とか基本的に嫌いなんだけど(恋愛による所が大きいですが)サポーターとか応援する人って球団の地元の人がメインじゃん、まあ違う人もいるけどさ。そういうものに全くノれないんだよね。
ヤンキーとか昔から嫌いだったし地元に対する愛着とかないからそういう気持ちが沸かないし興味持てないのは僕にやっぱりヤンキーとかマイルドヤンキー的なものが一切ないからだと思ったりした。
あとライターの宮崎くんが出てたけど話してるの最初だけじゃんw
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