Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『もらとりあむタマ子』


監督/山下敦弘
脚本/向井康介
出演・前田敦子/坂井タマ子、康すおん/坂井善次、伊東清矢/仁、鈴木慶一/坂井啓介、中村久美/坂井よし子他




苦役列車」でもタッグを組んだ前田敦子山下敦弘監督が、実家で自堕落な日々を送る女性タマ子の姿を描くドラマ。東京の大学を出たものの、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻ってきて就職もせず、家業も手伝わず、ただひたすらに食っちゃ寝の毎日を送る23歳のタマ子が、やがてわずかな一歩を踏み出すまでの1年を追う。音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」の30秒のステーションIDとして、春夏秋冬を通して描かれてきたタマ子の日常を長編化した。主題歌を星野源、脚本を「リンダ リンダ リンダ」「マイ・バック・ページ」の向井康介が担当。(映画.comより)


新宿武蔵野館にて観賞。あまり観に行こうと思っていなかった感じもあって公開されても足が向かわずにいたが、『タマフル』での宇多丸さんの評も聞き、近所のニコラの曽根さんからもオススメされて、やっぱり山下敦弘監督作品だし観に行かなきゃあということで。
レディースデイだが女性ばっかりというわけでもなく、僕の後ろにはおばちゃん二人がいて、娘がシドにハマってるから最近一緒に観に行くのよ〜、やっぱり娘っていいわねえなどと話をしていました。



前田敦子が寄せる山下敦弘監督への思い、そして自ら語る「私の夢」とは…(http://eiga.com/movie/79100/interview/)


山下「『苦役列車』を見てくださった方であれば分かると思うのですが、今回は特に何もしていないんです。セリフやストーリーに頼っていませんから。今回のあっちゃんは主役なのにしゃべらないし、ダラダラしているし、不機嫌(笑)」と説明。そして「それが魅力的に見えるというのが、あっちゃんの持っている魅力なのでしょうね。そこを信じてとまで言うと大げさになりますが、そういう役をやっても魅力的になるだろうなと僕と脚本の向井(康介)の中にはありました」
山下「僕の昔の映画と同じくらいの尺なんですよ。何もないところから始めると具体がない分、固まらないんですが、この人で何かやろうかとなると、映画って作れるなって思いますね。僕はそういうタイプなのかもしれません」
と上記のインタビューにあるようにまさしくそれが際立つというか再確認というかそれがわかるという映画だった。


前田敦子がだいたい食べて寝転んでマンガを読んでいるという場面がほとんどでありながら観れるというかみせれるのはやはり彼女の魅力故なのだろう。


半径数百メートルな作品だし主演の前田敦子は食べてるか寝てるかマンガ読んでるかだけども、前田敦子の求心力というか目が離せない感じ。不機嫌少女映画の系譜にあるんだろうけど、今のアイドルを得て女優に移行しようとする狭間を山下さんが撮る意味がわかる。『タマフル』で宇多丸さんが言っていたようにとびきりの美少女ではなく、顔面のパーツが確かに中心に寄っているといえる前田敦子AKB48の中心に、いやがる彼女を配置し目がなぜか離せないセンターがいることで彼女自身も輝き周りに与える影響を考慮した秋元康の慧眼なんだろう。
あまちゃん』でユイがアキに言ったことに通じているよう。可愛いだけではもはや勝てないアイドル戦国時代。クドカンは最後までアマチュアとプロのあまちゃんに主軸を置きながらプロである鈴鹿に歌わせ三代の呪縛を祓わせたようにプロの力を信じていた。目が離せない魅力はいうなれば運命的なもの。上を目指し切磋琢磨し未来を目指す者たちがぶち当たるどうしようもないものがそれであり、いかに抗うか諦めるか。オリジナルがもはやコピーとの比較対象としての価値を奪われながら高尚なもの扱いされるねじれ。とりあえずコピーの方が身近だ。前田敦子は誰もコピーせずにされない存在なのかも。




↑この中学生とのやりとりというか関係性の中での台詞や動きは面白かった。この中学生の仁は彼女にあの人好きなの?とか言われたら全然とか。あの人友達いないんだとか、言われてタマ子に従う所とか。映画を通して徐々に成長しているのがわかるのも季節感がでていてよかった。お父さん役の康すおんさんは尾藤イサオさんをマイルドにしたような顔でタマ子との二人のシーンが多い中でなんだかホンワカするような感じで見ていて微笑ましいというかいい顔の人だなあと思った。
あと、タマ子が『天然コケッコー』(山下さんで映画化)読んでたりとそういうのも山下作品観てきたので嬉しかったり。


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苦役列車
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