Spiral Fiction Note’s diary

ライター&「monokaki」編集部スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「週刊ポスト」で「予告編妄想かわら版」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉ーーあだち充と戦後日本の青春」を連載中です。

『エリジウム』

金曜日から公開が始まったニール・ブロムカンプ監督『エリジウム』を新宿のバルト9にて観賞。チャリで渋谷まで出て明治通りをひたすら漕ぐと三十分ほどで到着。
バルトの壁面には来週から公開の園子温監督『地獄でなぜ悪い』のポスターが貼られていた。いよいよ来週から公開


洋泉社から発売中の『別冊秘宝 凶悪の映画事件史』では本日公開の白石監督『凶悪』と『地獄でなぜ悪い』特集がメインです。僕は「園子温自伝「非道に生きる」を読んで「地獄でなぜ悪い」を観る」という文章を寄稿しています。『地獄でなぜ悪い』を観てから読んでいただいても観る前に読んでいただいてネタバレ等はないので問題ないと思います。『非道に生きる』に書かれている事が本当に『地獄でなぜ悪い』に直結しているというか園さんの考えが体現されているなと確認できました。


客入りはそこそこでしたね。前作『第九地区』はメジャー作品ではなかったのもあるだろうし、僕みたいに『第九地区』好きだった人にはマストな作品ではあると思います。


「District 9(第9地区)」
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20100415



監督・ニール・ブロムカンプ
キャスト・マット・デイモン/マックス・ダ・コスタ、ジョディ・フォスター/デラコート長官、シャルト・コプリー/クルーガー、アリシー・ブラガ/フレイ、ディエゴ・ルナ/フリオ



第9地区」のニール・ブロムカンプ監督がマット・デイモンを主演に迎え、富裕層と貧困層に二分された世界を舞台に描くSFサスペンスアクション。2154年、人類はスペースコロニーエリジウム」に暮らす富裕層と、荒廃した地球に取り残された貧困層とに二分されていた。地球に住む労働者で、事故により余命5日と宣告されたマックスは、エリジウムにはどんな病気でも治すことができる特殊な装置があることを知り、厳しい移民法で出入りが制限されているエリジウムへ潜入を試みる。エリジウム政府高官役でジョディ・フォスターが共演。「第9地区」のシャルト・コプリーも出演。(映画.comより)


前作の主役だったヴィカスを演じていたシャルト・コプリーがクルーガーという役で出ていたりする。前作同様に荒廃した町が出てくる。前作は南アフリカ共和国だったと思うが今作ではロサンゼルスが地球では舞台。2100年代だったが富裕層はエリジウムに住んで病気もせずにすぐに完治させる装置もあるが地球では貧民層が貧しい暮らしをしている。



前作『第九地区』ではエビ星人が帰って行く終りだったが今作はエリジウムに主人公のマックスが行く。パワードスーツを直接肉体にネジをぶち込まれて神経細胞に繋がれたりするからすげえ生身感があって、SFなんだけどちょっと現実によっているような。悪そうな奴はだいたい友達じゃないけど車泥棒とかしてた頃の悪い仲間連中も顔に味があってよいなあと思う。



今作を観て思うのはエリジウムの長官であるデラコートの画策と事故であと5日しか生きれなくなったマックスを巡る物語だが、エリジウム自体の存続を巡るデータがマックスの脳内に移された事で物語が大きく展開し始める。
かつての幼なじみの娘が白血病でやばいとかそのフレイになぜか目をつける追跡者のクルーガーとか脳内にデータあるから殺そうと思っても殺せない状態になるマックスとかきちんと主要人物達がエリジウムに向かわざるえない展開になってくるのでワクワク。地球での戦闘シーンも『第九地区』みたいに荒廃した砂煙の舞う町が舞台だけど画としてはやはりよくて。



物語としてはエリジウムの存続を握る存在というかデータを脳内に持ったマックスというキーがどう動くかのかなんだけど、この作品最後の方まで観てると既存のシステム(ここではエリジウム)をアップデートすることで世界の在り方を変えてしまう。これは革命ではなく変革であって、出入りの規制されるエリジウムをどう貧民層に解き放てるか、マックスの当初の願いはそうではなかったが展開としては世界の構造を変える行動になっていく。エンディングで変革する世界はよく考えたら伊藤計劃の『ハーモニー』の世界みたいな気もしなくもないなとか思ったけど。


富裕層と貧民層は実世界でこれから増々格差が拡大されていくのはもう確実なわけで、その時その世界の構造を変革するのはきっとこういうデータのアップデートでぐるりとシステムを反転させるぐらいしかないのかもしれない。
SFは未来や未だ見ぬテクノロジーを描くものだが、そこにあるのは現在の世界と地続きの問題意識やこの先不可避な問題への創り手からの回答のひとつでもあるのだろう。


やっぱりこの監督の作品好きだなあ、問題意識とかビジュアル的なものも。もう次回作を楽しみにしている。

非道に生きる (ideaink 〈アイデアインク〉)

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