Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『ヴァンパイア』


監督・脚本・音楽・撮影・編集・プロデュース: 岩井俊二
出演:ケヴィン・ゼガーズ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、蒼井優アデレイド・クレメンスアマンダ・プラマークリスティン・クルック、レイチェル・リー・クック他



ストーリー:高校教師のサイモン(ケヴィン・ゼガーズ)は、アルツハイマーの母親(アマンダ・プラマー)と一緒に暮らしている。ある日、彼はウェブサイト上で、一緒に自殺してくれる仲間を探している人々が集まる自殺サイトを見ていた。サイモンは、そのサイトで血をくれる人を探していた。そんな彼は、自殺を志願する人々から“ブラッドスティーラー”や“ヴァンパイア”と呼ばれていて……。(シネマトゥデイ


岩井俊二監督インタビュー
http://www.cinematoday.jp/page/A0003390


 シネマライズにて観賞。主人公のサイモンがかなり最初の方から監督である岩井俊二さんに見えてくる、なんでかわからないが見えてくる。
 『リリイ・シュシュのすべて』はネットのBBSを使って書かれたかなり早い作品だったし、岩井さんはデジタルカメラの導入など自分で編集や音楽等自らやってきた日本の映像作家の中では最先端の人でもある。今作も自殺サイトによる出会いからでそこに比重は置かれていないが現在の社会は目的が同じモノ同士は、今までなら出会う事がなかった人たちが出会えてしまう社会でもある。


 サイモンは死にたい人間から致死量になる血液を抜いて殺している。普段は高校の先生で生物を教えていて母親はアルツハイマーになっている。彼が出会った警官の妹が彼を気に入って彼の家に勝手に上がり込んだりするようになって彼の諸々の事がバレて彼のその生活は終りに向かっていくのだが、そんな事はつゆ知らずに彼は自殺したい彼女たちの血を求めていく。




 そんな彼が孤独な魂と少しだけ寄り添う事が出来たと思った刹那に物事は崩壊していっている。彼がパーティで出会った血が好きな男は彼からすればただのレイプであり変質者なのは彼の美学とはその行為はかけ離れていたからだ。


 普通の生活の中に、普通の人のような彼の中に潜んでいるその血を求める狂気に対して、何かを求め続ける事がいつしか普通の生活を脅かして崩壊させて行くことにもなる。
 それでもサイモンはやめれない。映像的には岩井さんをずっと観てきているからああ岩井さんの画だなって思う。光の加減とかも、なんだかふわふわしているような白昼夢にいるような感覚がした。


 海外で撮って海外のキャスト、ミューズな蒼井優は出ているとしてもそれでも岩井俊二の映画になっている。そういう強度というか軸は変わらないのだなと思う。
 この映画の小説の前に出た『番犬は庭を守る』ははたして映像化されるのか、それが僕は観たいと思っている。


 映画館で観た時にはあまり感じなかったが小説版のサイモンの幼少期から読んでいくと彼が出会った少女たち、女性達は岩井さんが出演した庵野秀明監督『式日』のあの彼女もそういう少女達の一人だったように思えてくる。冷凍庫とあの祭壇は終りと始まりの装置。


庵野秀明式日
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20081117


『Love Letter』
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20080701

ヴァンパイア

ヴァンパイア

番犬は庭を守る

番犬は庭を守る

花とアリス [Blu-ray]

花とアリス [Blu-ray]