Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『バークアンドヘア』

 25日から公開でとりあえず新宿バルト9から順次みたいな感じらしい、『バークアンドヘア』を観に行く。が、24時30分からの回しかないという・・・。終わると二時過ぎて終電もないのでチャリでバルト9まで。



監督:ジョン・ランディス
出演:サイモン・ペッグアンディ・サーキストム・ウィルキンソンアイラ・フィッシャー



ストーリー・1828年エジンバラ。インチキ商売で生計を立てているバークとヘアが、家賃収入のために貸している家に行くと、借主が死んでいた。そんな時、ノックス博士が死体をいい値で買い取っているという噂を聞き、ふたりは早速、死体を博士の元に持ち込むことに。


解説・イギリスで実際に起きた“バークとヘア連続殺人事件“を基に映画化したコメディ・スリラー。死体を売って儲けようと考えたふたりの男が、次第に自ら死体を作るために殺人に手を染めていく様を描く。サイモン・ペッグアンディ・サーキスが、バークとヘアを妙演しおどろおどろしい内容を笑えるスリラーとも言うべき新ジャンル作品に変身させた。(ぴあ映画生活より)



 サイモン・ペッグ出てるので観たいなって思って観に行ったわけですが18世紀のイギリスは近代化の前なのでまだのんびりしてるような感じですね。ちょうど発売された伊藤計劃×円城塔屍者の帝国』や前に出ている皆川博子『開かせていただき光栄です』の雰囲気と近いのではないかなって。
 『屍者の帝国』はSFな設定で屍者を動かすテクノロジーを持った18世紀終りぐらいnイギリスや世界を巡る物語で『虐殺器官』で新しい作家として期待されたが作家生活数年で亡くなってしまった伊藤計劃氏の残したプロットを盟友であった円城塔氏がそれを元に三年数ヶ月かけて書き上げた小説。
 『開かせていただいて光栄です』は解剖学を教えている教授と弟子達の話で、死体が出て来てみたいなミステリーで時代背景はおそらく同時期。



 主役二人のやりとりはテンポよくてよかったです。次第に殺人に手を染めていく二人、だがまったく悪気がないように殺して死体を解剖学の教授に売り渡していく。基本的には金のため。バークは気に入った女の子が舞台やりたいから資金を援助するために、ヘアーは結婚していてアル中の奥さんとの幸せのために。
 人を殺して売ってるのにどうもテンポや台詞のやりとり、なぜかのほほんとしている感じでコメディーちっくな展開。最後には諸々かたがつくのだけど。


 まあ、レンタルで待ってもいいんじゃないかな。『宇宙人ポール』とかみたいに超オススメって感じではない。サイモンとか好きなら観に行けばいいんじゃないかなってぐらい。エドガー・ライト監督でサイモン・ペッグニック・フロストコンビな最新作『The World's End』が十月から撮影らしいので今からすでに公開が超楽しみ!このコンビで『タイタン』の映画の警官役のコンビの声優もしてたけど世界的ブランドになりつつあるけどさすがに声優だと英語話せない僕にはしんどかった。



 最近読んだ小説の木爾チレン著『静電気と、未夜子の無意識。』についてのレヴュー書いたんだけど著者の木爾さんや担当編集さんから書いたレヴューかなり当っているらしくもうすぐ出る『パピルス』の彼女のインタビュー読んでくださいって言われた。ということは『ジョゼと虎と魚たち』好きな人はきっとこの小説好きになるはず。


 読みながら浮かんできたのは渡辺あや脚本『ジョゼと虎と魚たち』で、たぶん木爾さんはこの作品が好きだと思う。言うなれば田辺聖子さんの『ジョゼ〜』という短編を渡辺あやさんが映画脚本にし、その影響を受けた木爾さんが自分に取り込んでさらに自分の中の物語の土台というか雛形にし小説にしていったような気がした。


 怖いものを好きな人と見たかったジョゼのような未夜子のカミナリ。僕は映画『ジョゼ』がとても好きなので勝手に夢想してしまった。亘という名前は恒夫を彷彿させるしツナ子はジョゼの祖母のようだ。


 0「未夜子と、格好よくてつまらない君達の夢。」の田辺睦夫は『メゾン・ド・ヒミコ』の岸本春彦の欄干にもたれている姿が浮かんだ。金魚たちはラブホテルでジョゼが見た古代魚のように未夜子の中に巣食っていてそれが亘との記憶と溶け合って空に浮かんでいるみたい。未夜子は恒夫で亘はジョゼと置き換えれるかなというのは僕が渡辺あや脳だからかもしれない。全然違ったら申し訳ないけど。


 未夜子は可愛くて他の女子からもおはようよりも嫌みや悪口を言われた方が多い女の子だが嫌みではない、ある意味では不思議ちゃんなのだろうがそれがすごく活きている。
花火の時に洋を見ているかつての同級生は昔だったらきっと売れ残った金魚を大量に安く買って夜のプールにその金魚を放ったような女子たちに見えた。最近起きたプールに金魚を放った女の子達が浮かんだ。
 彼女達が羨む未夜子の間には友情なんか成立しない、恋に真っ直ぐな彼女はその辺りをシカトして自分の景色を自分の色彩で彩って何を言われても気にしないだからこそ美しさの中で燃える花火や生きていた金魚は鮮やかで終わった後の空の煙る景色や死骸になった金魚は哀しく朽ちている。
 気持ちやその感情にある自意識や景色を色鮮やかに書ける人なんだなって思った。絶対『ジョゼと虎と魚たち』好きだと思うんだよなあ、きっと。

屍者の帝国

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静電気と、未夜子の無意識。

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ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

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ジョゼと虎と魚たち Blu-ray スペシャル・エディション

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