Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『きっと ここが帰る場所』

 昨日のお昼には渋谷ツタヤにて『多重人格探偵サイコ』の漫画家である田島昭宇氏のサイン会があったので渋谷に。時間があったのでタワレコで友人に頼まれたWhirrというシューゲイザーバンドのアルバム『Pipe Dreams』を買いに。特定の店舗だとライブ音源のCDを特典でくれるというので。
 彼らの音はまさしくマイブラチルドレンなサウンドだった。そこの棚に僕の好きなシューゲイザーというかシューゲイザー好きにこの数年なったきっかけのLetting Up Despite Great Faultsのセカンドアルバム出るのが告知されててテンション上がる。


 リブロでこの間読んだ阿部和重著『クエーサーと13番目の柱』関連で阿部さんの『ミステリアスセッティング』を、それに前に買ったけど知り合いにあげてしまった樋口毅宏著『テロルのすべて』とばるぼら著『岡崎京子の研究』を。
 

 『クエーサーと13番目の柱』
 戦後のアメリカと日本の関係を書き続けていた阿部作品。神町サーガに代表される日米関係と天皇小説の系譜に現在のネットや技術をぶち込んで世界を多層化し時にはメタフィクションを、成熟しない故に成り立ったこの国の文化を小説にぶち込める作家がやはり阿部和重なんだと実感する。
 ただ今作は日米ではな天皇小説ではなく、日英と女王にまつまる小説。しかながら読んでてゾクゾクする展開とタイトルに込められた意味がわかり始めると物語はさらに加速度を上げて暗闇のトンネルの中へ、そしてクエーサーな干渉に似た光のプロズムに包まれる。


 東浩紀桜坂洋著『キャラクターズ』を読んだ後に読むとさらに考えさせられる作品というか相乗効果でした。『キャラクターズ』の文庫を『クエーサー』読む前に読んでいてそこに阿部さんの事が何度か出てくるので。でも『キャラクターズ』もすごく面白い、三島賞取った『クォンタム・ファミリーズ』よりも構造がメタで多層的、本当にフィリップ・K・ディックの作品を現在にバージョンアップしたような小説だった。


 で、『ミステリアスセッティング』帰って読んだらたまたまなんだろうけど『テロルのすべて』同様に核爆弾を巡る物語だった。世界のシンクロの仕方がこのごろどうもおかしい気がする、まさか引き寄せの法則を知らずに・・・。


 田島さんにサインしていただいて、緊張してあんまり話せなかった。小学生の頃からファンだからなあ。ファン歴二十数年って。


 帰って『ミステリアスセッティング』読んだり諸々作業をして夜にはまた渋谷に行ってシネマライズに。日曜日の夜の最終回は千円で映画が観れるのです。観に行ったのはショーン・ペン主演『きっと ここが帰る場所』でした。



監督・脚本: パオロ・ソレンティー
共同脚本: ウンベルト・コンタレッロ
音楽: デヴィッド・バーン / ウィル・オールドハム
キャスト:ショーン・ペンフランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュ、イヴ・ヒューソン、ケリー・コンドン、ハリー・ディーン・スタントンジョイス・ヴァン・パタンデヴィッド・バーン


ストーリー:元ロックスターのシャイアン(ショーン・ペン)は引きこもり生活を送っていたある日、故郷アメリカから30年も疎遠だった父親が危篤だという知らせが届く。飛行機が苦手な彼は船でニューヨークへ向かうが、臨終には間に合わなかった。そして、かつて強制収容所にいた父が元ナチス親衛隊員の男を捜していたことを知ると、シャイアンは父の代わりに男を捜す旅に出る。


チェック:引きこもりの元ロックスターが、疎遠だった亡き父の願いをかなえるためアメリカ横断の旅に出る人間ドラマ。第61回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『イル・ディーヴォ』のパオロ・ソレンティーノ監督と審査員長を務めたショーン・ペンがタッグを組み、第64回カンヌ国際映画祭エキュメニカル審査員賞を受賞した。オスカー女優フランシスマクドーマンド、U2ボノの娘イヴ・ヒューソンらが共演。タイトルの由来でもあるトーキング・ヘッズの名曲「THIS MUST BE THE PLACE」が心を揺さぶる。(シネマライズより)




 ショーン・ペン演じるシャイアンはキュアーのロバート・スミスがどうもモデルらしいですね、僕はキュアーあんまり知らないのですがパッと見がもろにそうらしいと言われますしパンフにも書いてありました。で、彼のファンのガールフレンドのゴス少女はU2のボノの娘らしいです。


 アメリカを旅するロードムービーでもありながら大人になると言う事について物語る映画でした。
 老いても化粧をしているシャイアンの顔から始まる冒頭。彼はずっと化粧をしてきた男、仮面のようなメタファーのメイク。それを始めた十五ぐらいでその事で父と縁を切るように絶縁してロックスターになった彼はずっと仮面のような化粧を纏っている。
 そして大人への、シャイアン充分におっさんなんで年齢としては大人ですが彼が社会性というよりも内面で大人になれなかった事を表すアイテムとしてタバコが出てくる。彼はヘロインとかいろいろやったけどタバコだけはしなかったと言う。いろんな場所でタバコを勧められるがずっと断り続ける。


 ロックスターで憂鬱な曲を書けば売れた。しかしその憂鬱な陰鬱な曲のせいで彼のファンの二人の男の子は自殺をしてしまった。だから彼はもう表舞台に出たくはない、しかし周りは歌ってよと言う、その事でずっと苦しんでいる。しかし、株をやって儲けているので生活にはなんにも困ってはいない。ただ空虚なものが心に広がってなにかが少し変だと思う現実を生きている。
 彼は危篤の父に会いにアメリカに。飛行機は怖いから船で。そしてホロコーストに収容されていた父が最後まで追っていた彼の憎しみを抱いていた元ナチス親衛隊員を捜す旅に出る。そしてそこで出会う人々との交流など描いていく。



トーキング・ヘッズデヴィッド・バーンも本人役で出ている。映画のタイトルにもなった『THIS MUST BE THE PLACE』が物語をさらに味わい深くしている。


 ロードムービーはやっぱりアメリカだなと思える光景。そしてショーン・ペンの演技が凄くいいなって思えて。いっつも歩くときはキャリーバッグをよぼよぼと歩きながら引きずっているのに車に乗ったら猛スピード出すし嫌な事があったらやっちゃうけど相手に謝ったりユーモアたくさんなシーンと広大な何にもないアメリカの風景やなんかが孤独な彼と世界をうまく描いていく。彼は元ナチス親衛隊員を探し当てるが・・・。



 化粧にタバコとか飛行機乗れないとかそういう繰り返し最初からメタファー的に出ているものが最後にうまく昇華されてシャイアンは父との関係を彼が生きている時には修復できなかったが旅によって精神的に大人になる。
 なんだが観ていてかなりシャイアンに感情移入できたのは今年になって僕が一族の事について調べたりしてることもかなり関係してると思った。何かを探す事と何かを巡る事で出てくる自分が知らない真実、それは良い事かもしれないし知らなかった方がいい事かもしれない。


 だけども何かが託されてしまった時に人はその事をなんとか試行錯誤しながらその想いを引き継いで行こうとする。主人公のシャイアンが愛しく思える、また会いたいなって思えるだけでもこの作品は僕の心に残る。


Talking Heads - This must be the place (Naive Melody) [live - 1984].avi


 夜はまた世界がシンクロして面白い事が起きたのでやっぱり呼ばれている気がする、呼ばれていると思ってなんとか足掻いてそちらの方に行こうと思える夜に、一日になりました。

パイプ・ドリームズ

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UNTOGETHER

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クエーサーと13番目の柱

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ミステリアスセッティング (講談社文庫)

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テロルのすべて

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岡崎京子の研究

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キャラクターズ (河出文庫)

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This Must Be the Place

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