この所どうも22時過ぎにうとうとして2時過ぎぐらいに目が覚める。まあ成長ホルモンが出る時間に寝てるので健康的っちゃあ健康的か、でもそのあと二、三時間は小説を読んだり今書こうとしてる作品のプロットを打ったりしてる。
最近深夜に読んでいるのは窪美澄さんの新刊『晴天の迷いクジラ』で、一日一章ずつ読んでいる。窪さんの本はこれが二冊目だけどデビュー作『ふがいない僕は空を見た』はタイトルもいいなと思ったし装丁も惹かれて手に取った。
物語も僕が好きな作品だったし、去年の本屋大賞二位にもなって話題にもなった。今年の秋ぐらいにはタナダユキ監督で永山絢斗と田畑智子がダブル主演で映画が公開される。
窪さんは今作で本屋大賞か他のデカイ賞を取るんじゃないかなって思う、感だけど。十年ぐらいしたら超メジャーな作家になっていて「なんか面白い小説ない?」って言われた時によく出る名前になると思うから今のうちから読んじゃったらいいと思う。
そんなサイクルで深夜に起きていて朝の九時にバルト9で映画を観ようと前々日にはチケットをネットで取っていたのだけど五時過ぎに寝て起きたら普通に八時過ぎで朝ドラ『カーネーション』始まってて急いで家を出たら雨だった。
電車で新宿三丁目までは二十分ぐらいなもんなんで余裕かましてたけど雨で遅れてたっぽい。でもいつも通り十分前には座席に付けた。朝の初回なんで客は十人もいなかったと思う。
人があんまり居ない映画館が好きだ、ポップコーンだとか食い物を持ち込んでいない映画館が好きだ。嗅覚はスクリーンに意識する事を阻害する。
朝の映画館の空間が好きだ。バルト9のエレベーターから見える新宿高校の屋上にあるプールに水滴が落ちて跳ねている感じが好きだ。
雨の新宿は普段の新宿よりも好きだ。
まあ、豪雨じゃなくて小雨だったけどね、今日の新宿。映画館で予告観てたら東京事変のラストライブは映画館でも中継するみたい。
椎名林檎はまたソロに戻るんでしょうかね。Dragon Ashは辰年で今年15周年です。椎名林檎と降谷建志は同学年で99年にブレイクしゼロ年代音楽シーンに与えた影響(プラスとマイナス)が大きいからロッキンとか二人にだいぶ儲けさせてもらってるんだからきちんとそういう記事書けばいいのにね、まあやらないだろうけどね。
小説が凄くいいと色んな人から聞かされていましたが読んでなかったけど何かどうも観たいと思っていた『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を観た。
キャスト: トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーンなど
監督: スティーブン・ダルドリー
原作: ジョナサン・サフラン・フォア
脚本: エリック・ロス
ストーリー・2005年に発表され、「9・11文学の金字塔」と評されたジョナサン・サフラン・フォアによるベストセラー小説を、「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。9・11テロで最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、父親が残したメッセージを探すためニューヨークの街へ飛び出していく。第2次世界大戦で運命の変わった祖父母、9・11で命を落とした父、そしてオスカーへと歴史の悲劇に見舞われた3世代の物語がつむがれ、最愛の者を失った人々の再生と希望を描き出していく。脚本は「フォレスト・ガンプ 一期一会」のエリック・ロス。オスカーの父親役にトム・ハンクス、母親役にサンドラ・ブロックらアカデミー賞俳優がそろう。(映画.comより)
原作小説も気になってたんだけど脚本は『フォレスト・ガンプ 一期一会』のエリック・ロスで『リトル・ダンサー』のスティーブン・ダルドリーが監督で、『フォレスト・ガンプ 一期一会』と『リトル・ダンサー』は好きな作品なので観たいと思ってた。またタイトルも惹かれる。
『フォレスト・ガンプ 一期一会』はフォレスト・ガンプという個人の人生を描いてるんだけどそこにアメリカの歴史が重なっていくってのが上手くて、『リトル・ダンサー』は少年の成長劇でその二人が組んで9.11以後のアメリカを舞台に少年を主人公にした作品なら間違いないだろうと。
主人公のオスカーは科学者を目指していた父の影響でもの凄く博識でいろんな事を知っている。父のことが本当に大好きな少年だった。
ある日、世界の基準軸が変わる、そう9.11同時多発テロによって。この作品のバッググランドにはそれがあるがこの作品はテロに対しての正義や悪などの価値観が崩壊しその後アメリカという国家が混乱していった出来事を描こうとしたものではない。その混乱は『ダークナイト』で描かれている。
ただそのテロで亡くなってしまった遺族の喪失とその後の希望を描いた作品だ。少年は父が商談で訪れていたために父をテロによって失う。
喪失は日々見えないのに少しずつ広がっていくものとある日突然、突発的に失われるものがある。後者は寝耳に水だからなんの用意も心構えもなく、ただ大事な人を奪われる。前者はその不穏感や病気などで症状が悪化する時に徐々に失われていく、覚悟が出来る人もいるしいない人ももちろんいる。
喪失感に耐えれない少年、亡くなる前に家の留守番電話に残った父の留守電、彼が母に黙っていたこと、彼が誰にも離せなかったこと。
父の部屋で見つけた鍵。少年はその鍵が入っていた紙に書かれていた「Black」という言葉を頼りにニューヨーク中のブラックさんに会ってその鍵で開けれるものを探し始める。
その事を母に隠して行う少年と母の間には会話もなくなり母子の関係は悪いものになって行く。会話が減ってコミュニケーションがなくなる。彼は後ろめたいから余計に母に対して以前のように接する事ができない。
向かいのマンションに住む祖母の部屋に間借り人で話せない老人がいる。いろんなブラックに出会った後に彼はその話せない老人と共にさらにブラックに出会うためにニューヨークを彷徨っていく。
上記のストーリーで「第2次世界大戦で運命の変わった祖父母」ってあるんだけど映画ではさほど大きくは扱われない感じかな。小説だと祖母の回想と交互に展開みたい。
あと小説は「ヴィジュアル・ライティング」と言われる紙面上の工夫が施されており、物語の内容に沿って多数の写真や図版が組み込まれているほか、言葉を失った老人の手記を活字で再現するために一行しかないページを挿入したり、誤植をチェックしたことを示す印を作品の本文でそのまま再現するなどの視覚的な実験が試みられている。らしいよ。
やっぱり小説を読まないといけないかな。
途中でオスカーがアスペルガー症候群なのかなって思ったんだけど、作中で本人がそうじゃない診断を下されている事を言っていた。
観てて半分ぐらい経って「ありえないほど近い」ってタイトルにつけるぐらいだからどこに話が終結していくのかなって思って観てたけど僕はどう終わるのかわからなかった。でも、鍵の事と母との関係を解決するプロットなのは間違いないからどう決着させるのかなって。
後半に入って老人とブラックを訪ねてまわるオスカーは彼の決めたルールを少しずつ緩めていく。老人は彼の言う通りには動いてくれない、彼は乗るのが怖かった地下鉄にも歩くのがしんどい老人と乗ったり、ぼろぼろの橋を恐怖があるけども渡って行く。老人という他者がいることで彼は彼自身が決めたルールを少しずつ不本意ながら破りだす。個人だけの世界から少しだけ開かれた他者との世界に。
老人と少年の二人を見ていると僕にはポール・オースター『ムーン・パレス』が浮かんできた。少年は父の残した鍵で開けれるものと父が遺したメッセージを探しているのだけど観ていると彼の父のようなポジションで観てしまうような自分がいた。少年目線よりもどちらかというと親目線になんとなくなった。
後半最後に鍵の謎は解かれる。それは読むなり観るなりすればいいのだけどそれは彼のアイデンティティを父の不在を埋めるべきものではないということ。
そして、残された問題である母との関係の悪化を最後に埋める展開でニューヨークを上空から撮った映像はまるでジオラマで作られた街みたいに見える撮られ方だったんだけど、それはオスカーがまだ両親の庇護の中にいるというイメージを沸かせてた事と一致した。
人の人生は出会った人すべてと別れていく。それは生まれて死ぬこととが対にあるように絶対的に避けられない。大事な人は自分の細胞の一部のように体内に取り込まれ想い出は増えていく。
死や別れによって引き離されればその痛みは自分の一部が失われる事だから耐えようない喪失感と痛みを伴う。喪失のポッカリした空間にはその人の輪郭みたいな形や思い出す匂いの記憶があるから他の誰かがすっぽりハマる事はない、代わりはいない。だけども僕らはその失われた部分を埋めようとする、これも違うあれも違うとそのうち絶望してしまうかもしれない、誰も大事に思えずに愛しいという感情もやがては枯れて諦めが芽生えてしまうと心は他者に開けなくなっていく。
だけどももうそのポッカリと空いた空間を無理に埋めようとしないで他の誰かと出会ってそれとは違う形が僕たちの中にできればいいなと思う、たぶんそれしか前には進めない。
私たちは失われる事を前提に与えられる。永遠は一瞬の中に閉じ込められる。永久凍土に氷づけのマンモスみたいに、もし取り出せてもそれは崩壊していくもの。
やがて大事な人もいなくなるだろう、そして僕も消えていくだろう、もうそれだけは避けれない。それでも人が人と触れ合う事を出会う事を欲し続けるのはその刹那の瞬間を僕らは忘れる事はできないからだ、それに動かされるからだ。喜びも哀しみも怒りも楽しみも憎しみも愛しさも刹那の中に。
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