最近読んだ本は『リバティーンズ物語 ピート・ドハーティとカール・バラーの悪徳の栄え』というリバティーンズについて書かれた本。
またピートは捕まって六ヶ月ぐらい拘留されるというニュースを昨日辺り見たんだけど、ゼロ年代初頭にストロークスとリバティーンズというアメリカとイギリスから出てきた新世代ロックバンドはやはり同時代を生きている人間としては観れて(リバはピートがいる状態はないが)よかったと思う、その辺りは友人の竹原に感謝している。
リバのピートとカールというビートルズで言えばジョンとポールみたいな愛憎関係の二人の話も関係者のインタビューも入っているがこれが生々しい。まずひとつの出来事にとってもピートとカールが真逆の事を言っていたりこう言われているが実は相手側がそうだったんだとか。
どっちかが嘘をついているというよりは本人達がそう思っている、記憶が時間と共に変化している、本当に嘘をついている可能性もあるが事実はその関係者だけその人達分の真実が存在する。細部は異なる。だから真実は多数あって噛み合ないピースのいびつさが人と人の繋がりであり歴史になる。
表立って伝えられる歴史は勝者の支配者の歴史なので都合の良い風に書き換えられて伝えられる。僕らが教えられる歴史や史実は後に都合のいいものに書き換えられている場合が多い。細部が異なる事の意味。
The Libertines - Time For Heroes (Reading 2010)
The Libertines - Vertigo (reading & leeds 2010)
新刊だと森博嗣『ヴォイド・シェイパ』を読んだ。森さんの『スカイ・クロラ』シリーズを出した中央公論社なんで装丁も同じようにカバーは透明で『スカイ・クロラ』シリーズのハードカバーは本体が空でカバーから見える感じだったのが今回は林というか山みたいな感じで同じくカバーは透明。
最初に何か『バガボンド』×『ドラゴンボール』みたいな剣豪ものって読んだか見たんだが読んだ感想だと全然『ドラゴンボール』感ない、『バガボンド』にはやっぱり強いかな。山で師匠であるカシュウと暮らしていたゼンは彼が死んで山を下りてカシュウの知り合いを訪ねてから旅に出ようとしていた。
カシュウは剣の達人でかつては藩とかの指南役とかそういう所にいたのだが、山に籠り幼いゼンを育てながら他との交流を経っていた。
ゼンの正体や剣とはなにか強いとは何かをゼンが探す旅を描いているが、どう考えてもこれは続きがどんどん出ていくと思う。『ヴォイド・シェイパ』はエピローグみたいな序章みたい。
文体は『スカイ・クロラ』シリーズに近い。『スカイ・クロラ』シリーズでの戦闘機の旋回だったり重力とか戦いを描く時の描写が剣と剣の戦いや想いなんかの描写に近いので『スカイ・クロラ』シリーズが好きな人は面白く読めるシリーズになると思う。『スカイ・クロラ』は一冊目なのにシリーズでは実は最後の物語だったというような繰り返し系みたいな展開はできないだろうから正統派で時間軸の流れで書いていくんじゃないかな。
昨日は山田玲司『非属の才能』という新書を久しぶりに読み返してみた。これは親になる人にはかなりオススメな気がする。数年前に読んだ時よりも沁みた。中には「川に落ちた方がいい」というどこかで僕が言われたセリフもありつつ、諸々実は縁がある新書だった。
で今日はバルト9にてわりと話題なアカデミー主演女優賞をナタリー・ポートマンが取った『ブラック・スワン』を観に行った。まあ日曜の昼間だしかなり埋まっていた。昨日の『タマフル』でのハスラーで宇多丸さんが批評もしていたので朝起きて聴きながら渋谷まで歩いて行った。
無差別型映画評論コーナー「ザ・シネマハスラー」は、ダーレン・アロノフスキー監督、ナタリー・ポートマン主演の話題作『ブラックスワン』を評論↓
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20110521_hustler.mp3
↑聴くとほっほうなるほどと思いながら前作『レスラー』はけっこう最後がきたので期待していった。
監督:ダーレン・アロノフスキー
キャスト:ナタリー・ポートマン、バンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー
ストーリー・ナタリー・ポートマン、ミラ・クニス共演の心理スリラー。ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ポートマン)は、元バレリーナの母とともに、その人生のすべてをダンスに注ぎ込むように生きていた。そんなニナに「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが巡ってくるが、新人ダンサーのリリー(クニス)が現れ、ニナのライバルとなる。役を争いながらも友情を育む2人だったが、やがてニナは自らの心の闇にのみ込まれていく。監督は「レスラー」のダーレン・アロノフスキー。主演のポートマンが第83回米アカデミー賞で主演女優賞を獲得した。
白鳥はできるが黒鳥はできないニナが少しずつ崩壊していく。まずは性的な事から始り、バンサン・カッセルに家で自分で触ってこいって言われて自室でオナニーするバレリーナってどんだけ純粋で真面目な女なんだろうと思うが、まあその自慰行為の後のショットが映るものがあって怖い。
そういう映り込むものとかショットとショットの間に急に映るもので体がビクッてなる、まあスリラーだから。自分の暗黒面が出始めるともう一人の自分であるドッペルゲンガーを見てしまうようになり幻聴や幻覚を見始めるようになる。この辺りの描写はCGとかがうまく使われていて確かに怖い。
ニナの主観であるはずが見ているとその主観は正しいのかどうかということになってくる。いろんな作品の影響下にある作品、いわゆるサンプリング映画であるらしい。
僕はまったく忘れていたが今敏監督『パーフェクトブルー』と同じようなシーンもあったみたい。ダーレン・アロノフスキー監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』は構図もまんま『パーフェクトブルー』らしいし。
<ダーレン・アロノフスキーによる映画『レクイエム・フォー・ドリーム』に本作の一部シーンのオマージュが用いられている。監督の今敏とアロノフスキーは2001年に対談しており、オマージュであることが今本人に直接伝えられている。>らしいので参考にはしてるんだろうね、今作でも。
<元バレリーナの母とともに、その人生のすべてをダンスに注ぎ込むように生きていた>ってストーリーにもあるんだけどこれがまあ嫌な感じだった。自分の叶わなかった夢を子供に託すっていうこの身勝手極まりない母親とそこから抜け出せない娘ってのが本当に見ていて気持ち悪し、ある意味一番怖い。
作中でも夢があったけどあなたができてそれを諦めたのよみたいな恩着せがましい発言とか糞親の代表格だね、お前と子供の人生は別物で子供は親の所有物じゃねえから勘違いすんなっていう。途中でニナが苦しんでる時に少しだけニヤッて顔するんだな、これがイヤらしい感じの笑顔だった。
話のベースが『白鳥の湖』だしこれは誰でも知ってる物語だって役者に言わせるぐらいだからそういう母娘の昔からある関係とか普遍的にあったりするある種のステレオ的な物語なので受け皿は広いと思う。
黒鳥になれないニナはドッペルゲンガー見たり幻覚や幻聴を覚えて暗黒面に引きずられていく。クラブでのダンスシーンは「ハスラー」で宇多丸さんが輸入版ブルーレイで一コマずつ送って確かめたらしいんだけど45秒に1000カットで途中に様々な多種多様な映像が入っていてサブリナミル効果になっている。と聴いてたので目を凝らして観てたが、踊ってる連中の顔がみんなニナになってるのとか後に出てくる黒鳥とかぐらいしかわからなかった。でも、人間って観れてなくても、捉える事ができなくても目では観てるから終盤に向けてそのサブリナミル効果を受けているんだろうな。
象徴的な鏡。そこに写るもう一人の自分。怖いわ、あれは映像的に効果的。ただ終わり方が前作『レスラー』と一緒じゃね?という気が。『レスラー』は最後に死に場所を選んで飛んだわけだしその気持ちはわかる部分があった。『ブラック・スワン』はめっちゃ好きってほどではないかなあ、でも僕の中では88点ぐらいな気がする。
映画 SUPER 8 Trailer2 予告編
↑予告で観て観に行こうと思った作品。製作総指揮がスティーヴン・スピルバーグで監督がJ・J・エイブラムス(『LOST』)で観た感じだと『E.T』や『グーニーズ』ぐらいの頃のアメリカが舞台っぽい。
たぶん、宇宙人関係の作品だと思うんだけど、もうぼちぼちアメリカも宇宙人いるって公表するんでしょ、2012年とかに(都市伝説で言ってたからまあ嘘だとして)。スピルバーグは宇宙人に遭わされて『E.T』とか作らされたって説嫌いじゃないんだよね。
クッキーシーンにアナ『HOLE』のレヴュー書きました。↓
アナ "TEI"
福岡出身のバンド、アナはレーベルも京都の「SECOND ROYAL」に移籍し、彼らの第二期の幕開けとなる三年振りのアルバム『HOLE』が発売になった。
彼らは渋谷系に影響を受けているバンドであり年齢的にも僕と同学年で今年三十代に入る。数年前に彼らのライブを初めて観たとき、渋谷系にまったく影響を受けず、真剣には聞いてなかった僕でさえもオザケンやコーネリアスの影響を絶対に受けていると思わせられるシンセとサンプリングによるエレクロ・ポップを鳴らしていた。
この『HOLE』と前作『FLASH』が出るまでの三年間のあいだに、彼らはライブをしながら拠点であった福岡から東京に上京した。ボーカルである大久保君は『FLASH』までの時期を<中・高校時代に聴いてたもの、90年代モノの影響をひきずってやっていた>とインタビューで語っている。
それは90年代に思春期を過ごした世代にハマろうがハマらなくても流れていた音楽、脳裏にしっかりと刻みつき、あるいは脳裏の奥の方にわずかに残るものだった。彼らが鳴らす音楽はそれらを呼び起こした。だからそこに加わったシンセにサンプリングに彼らのライブパフォーマンスをライブで観たものはポップな音楽で踊り、ある意味では哀しい歌詞や少しのアイロニーも混ざった歌詞にかつて過ごした時間や人との想い出を揺り起こされた。
第二期の前に第一期が上京と所属していたレーベルとの契約解消によるフリーへ。そして「SECOND ROYAL」所属のRufusの上田修平氏との縁から三人でやってきた彼らが自分たちでアルバムを出そうとしていた際に彼にプロデューサーを依頼し「SECOND ROYAL」からやるならうちのレーベルから出しましょうとレーベル所属が決まり彼らの第二部が動き出した。そこまでにあった人と人の繋がりや彼らがやってきたものが目に見えて繋がり出した時に『HOLE』というアルバムが輪郭を増して作られ出す。
地元の福岡から上京し東京へ、そして三人で作っていた所にプロデューサーが加わり、前の三作とは制作環境が変わった中で曲が作られていく。アルバムを通して聴くと少しばかりノスタルジックな部分、歌詞もそうだが感じながらも同時代性とでもいうか同じような感覚を感じられる。まあ、前三作も歌詞的にはノスタルジックな部分はかなりあったけども。
《永遠と垂直に交わった時間の中で/時は去り 君が行き 僕はとまどった/見送っているようで僕らは見送られては/また誰かとの距離を歩いてくよと》
(「TEI」)
《君をおもい眠れない夜が何年続いたとしても/きっといつか土の下で眠るそんな日々がくるってことを/泣かないでほしい せつなさの上で眠る日に》
(「ノルウェイのあれ」)
《だれかと不意にあいたくなったろう/今夜も街へ消えていくのだろう/目にしみるような煙にまみれた/部屋にたちこめたため息よりはましさ》
(「夜は幻」)
どんだけ孤独なんだよっ! とツッコみたくなるような歌詞も彼らのポップサウンドにのるとノスタルジーを感じさせつつも踊ってしまいたくなる。時というものの中で僕らが掴みたくても掴めないもの、どうしようもない巨大な力の前で失ってしまうものたちと僕達の人生はいつも一緒だ。全てはギリギリのバランスの中で成り立っているように思える、本当の事とか隠されている事とか嘘だとか、僕らは3.11の大震災の後では確実に変わってしまったと思う。僕はそうだった。あなたはどうだろうか?
この『HOLE』からアナを聴きだしてもとてもバランスのいいポップなアルバムだと感じると思う。数年前から聴いていた僕もアナの変わらない部分と変わっていく部分のバランスが聴いていて非常に心地いい。彼らが影響を受けた核となる音楽たちと環境が変わり出会いと経験の中で手にした想いやテクニックや音楽性が溶け合っている。
アナ=穴=HOLEというある意味でのセルフタイトル。まあ、こういうの本当に好きだなって思いながらも第二期のスタートをきった彼らの音源を聴いてライブで彼らを見てほしい。単純にいえば素敵なポップミュージックがそこには鳴っている。
このアルバムがアナの新しい名刺代わりになる。オザケンやコーネリアスが好きな、好きだった人には特に聴いてほしいと思う。僕が彼らを聴くようになったのはアナを聴いてだから逆に先祖返りをしてしまったけど、90年代という時代から続くものが今どういうものに変わっているのかというだけでも彼らの鳴らしている音が同時代性を感じさせるものだと思う、特に70年代後半から80年代前半生まれ。きっと90年代的な表現に影響を受けた世代の表現がこれからもっと花咲くだろう。90年代に思春期を過ごした世代が三十代に入って表現の世界でももっと目立つようになると思うから。ポップでノスタルジーでアイロニーも含んだ散乱銃で色彩を失いつつある世界中をカラフルに。
《風が街のほうから季節を運んでは/幾千もの幾千もの通りすぎてた日々に/例え過ぎた言葉とメロディーを繋いでは/宛てもなく何枚もの返事を書き続けているのさ》
(「PLANET」)
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