Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『スコットランドヤード・ゲーム』

「キスフローズンライフ(仮)」メモ代わり
 彼女の家に挨拶しに行った男が彼女の母親と同居し始めてその彼女が居なくなって、彼女の母親と暮らしながら微妙なラインでの性的なも匂いを感じつつやがて関係を持ってしまう短編ぐらいのそこまで長くない話を想像してた、あるいは空が落とした雨と一緒に落ちてきた物語の断片。


 彼女はなぜいなくなったのか(まるで村上春樹的!)、彼は考えるがそれはわからない。彼女は母親が一人しか肉親がいないから何処かに、ここではない何処かに行くには一人にするほど残酷にはなれない。


 ならば生け贄として彼氏彼女の関係を楽しんで結婚する方向だった(その流れでいろいろ考えて乗り気ではなくなっていた)彼氏を差し出す、それはマリッジブルーのせいかもしれないし父を失ってずっと独りの母親を同じ女として哀れんで、残された二人が男女の関係になってもいいやっていう残酷な親切心かもしれない。他人の二人が同じ場所に住む、しかも義理の母親と義理の息子になる予定だった男女。二人は何処にもいけないからそこに留まる。だからそこの密室、親近感、じわじわと溢れてくる欲情、そういうありえそうな匂いの欠片。


 例えば居なくなった彼女をパソコンで検索してみると彼女はYou Tube上で日記のように様々な場所に現れている映像がアップされている。それは日本じゃなくて世界の各地でいいかもしれない。結婚資金で貯めていたはずの金が奪われて費用になっている、戦地や遺跡やバカンスをしている彼女の映像を夜な夜な見る。


 だからそのうち疑問が沸く、彼女を撮っているカメラは誰が撮っているんだ?と。彼女は誰かと世界を転々としている。彼女は外部で出て行ってしまっているのに自分と彼女の母親はこちらの内部に閉じ込められている。その怒りは性欲に向かうかもしれないし何かへの暴走へ向かうかもしれないし、彼の内部を揺るがして崩壊させる。だから彼の語り口調で展開される。そういう空気が孕まれる物語。


James Iha - Be Strong Now


四年前に何書いたかなってmixi見たら野島伸司著『スコットランドヤード・ゲーム』を買って読んでいた。


2006年06月02日
 三時過ぎに起きて、ぼやーとしててなんかあったなあって思い出せなくて、とりあえず予約してた歯医者で治療して、ぼやーて歩いて家に帰って。


 郵便局に行くのと野島伸司新刊『スコットランドヤード・ゲーム』を買いに行かないとって思い出して三茶へ。


 今まで帰って本読んでました。 まずは、一緒に買ったセイントセイヤ完全版2冊読んで、さあ、『スコットランド〜』読もうと思ったのだが、うーむ、さっぱりして読みたいと思ったので湯船に浸かりました、温泉の素を入れてリラックス。
 これから読む小説をどんな内容なのかってワクワク想像しながら。まあ、僕は野島信者なのでね。一番新しいドラマ『あいくるしい』は部屋で放送時間に電気を消してテレビの明かりだけでドラマを観ては毎回号泣してました。


 中学から影響されて好きなので言葉とかが僕の中に入り込んで、僕を構成する柱になってるんだなって思う。


 あらすじ   
 ケーキ屋を経営するマキさんという祖母に樽人(タルト)と名付けられた主人公。 プロサーファーだった父は樽人がお腹の中にいる時に海の事故で死んだ。
 樽人の母は再婚した、相手は20年間母に会うためにケーキ屋に通い続けスマートな体型だったがぽっちゃりとした体型になった平川さんという男性だった。 ケーキ屋に住み込みで二枚目の久喜夏彦という男がやってくる。 母と平川は新婚旅行で海外に。


 樽人は漫画喫茶で須永杏という看護士に出会う。徐々に杏が気になってくる樽人、しかし、彼女には3年前死んだ恋人がいた。それが自分の母親とダブる樽人だった。

 夏彦と一歳違いの樽人は親友になっていき、いろんな話をする。気になる杏のこととか。アドバイスをくれる夏彦。


 ケーキ屋で働く夏彦は樽人と杏のことをアンズタルトの物語だと言う。 樽人と夏彦はスコットランドヤードゲームという警察と泥棒に別れて捕まえられたら終わりのボードゲームをする、警察が捕まえられたら勝ち、泥棒は24ターン終わるまで逃げきれればいい。


 夏彦はやがて、自分を久喜だからクッキーと呼んでくれと言う、そうして物語はアンズタルトクッキーの物語に。
 樽人は死んだ恋人への想いに縛られている杏を現実に向かわせ24ターン以内に彼女を捕まえられるか。


 読みやすいし、野島氏特有の言葉遊びがたまりません、あとは名前の由来とかね。 アンズタルトクッキーの物語にするための名前、実家がケーキ屋にして関連させるとかね。名前って大事だよね。


 『世紀末の詩』であったけど、20年前に別れた恋人、夏夫と冬子が出会う。冬子はもう愛してはいないと言う。だが、冬子は夏夫の子供を生んでいた。彼女の名前は千夏。


 『千夏ちゃんと言います。幾千もの夏夫と冬子をつないでいく』
 もうやられたーって感じですよ、野島さん万歳ーみたいな。


 このパターンは『プライド』にも出てきて、ハル(キムタク)と亜樹(竹内結子)の関係の間に出てくる亜樹の恋人は夏川(谷原章介)だったりと。初回見て普通に夏って名前のキャラが亜樹の恋人なんだろうなあって思ったから、当たった時ガッツポーズ!


 谷原さんは『未成年』でヒロトいしだ壱成)の兄貴役だったから、のちに売れてまた野島ドラマに出たってことも嬉しかった。 


 『スコットランド〜』を読みながら泣きましたが、最近は涙腺が半端無く弱い。まず、本屋で見つけて手に持って歩いただけで嬉しくて内容想像したら泣けてきた、少し潤んだ。 役者になれそうなぐらい泣けます。半端なく涙腺弱いです。 大事な人のために泣けたらいいんだけどね。


 君の苦しみの全てが、僕の苦しみなんだ。
 君の悲しみの全ては、僕の悲しみ。
 君の寂しさの全ては、僕の寂しさ。
 そして、
 君の喜びの全てが、僕の喜びになる。

レット・イット・カム・ダウン

レット・イット・カム・ダウン

スコットランドヤード・ゲーム (小学館文庫 の 2-1)

スコットランドヤード・ゲーム (小学館文庫 の 2-1)