Spiral Fiction Note’s diary

ライター&「monokaki」編集部スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「週刊ポスト」で「予告編妄想かわら版」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉ーーあだち充と戦後日本の青春」を連載中です。

『スーパー・ササダンゴ・マシンのノンストッププレゼンテーション』


『スーパー・ササダンゴ・マシンのノンストッププレゼンテーション120min Vol.2 <昼の部>』
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/79320

 ラブホとライブハウスの町になっている渋谷の円山町のユーロスペースがあるところにちょっと前にできたロフト9。ユーロには行くのに実は一度も入ったことがなかった。今日初めて入った。昨日、そういえば、ササダンゴさんのイベントがあったよなと思って調べたら昼の部があったのでその場でチケットを取ったんだけどチケット取るのも簡単になったものだ。
 08年ごろにTBSラジオの「文化系トークラジオLife」界隈の人たちと知り合いになってからトークイベントに行くようになった。新宿ロフトで番組のメインパーソナリティーのcharlieこと鈴木謙介さんが出演した時には元赤軍派議長でこの前亡くなった塩見孝也さんもイベントに出演されていたはずだ。それが僕の初めてのロフトだったような気がする。観客の席にいた番組のサブパーソナリティー仲俣暁生さんが言われていたのは、「トークイベント難民」という言葉でずっと僕の中で印象に残っている。今みたいに本屋だったり様々な場所でトークイベントという頃ではなく、どのトークイベントに行ってもいる奴がいるという意味で言われていた、と思う。

 あれから十年ほど経った。トークイベントは増えまくり、出版業界も出版記念イベントなどが当たり前になった。本を書くだけではなく人前でトークができるかどうか、うまいかどうかも含めてタレント性が求められるようになった部分は間違いなくある。
 最初はどんなやつか見たいという欲望があるが、それが何回もと続くようになるか、客が入るかどうかはその人のトークスキルだったり、司会のレベルや一緒に登壇する相手との相性やトークスキルが非常にデカい。あとはどう考えても場数を踏んでないと人前で話せない、最初から話せるような人は元々そういう人だとしか思えない。
 「文化系トークラジオLife」という番組からゼロ年代以降の言論人だったり批評系だったりライターの人たちが、その後にラジオだけではなくテレビに呼ばれて行くようになったのは、ラジオという場所でcharlieや黒幕に呼ばれ、その場所で話すことで場数を踏んで行くという訓練に近いものがあったから慣れていったはずだ。今でもその機能は活きているし、例えば東浩紀さんがやっているゲンロンカフェでのトークイベントなんかも、ある意味ではそういう若手の人間の場数を踏んでいく場所になっているのだと思う。

 トークイベントが増えすぎたためになんかトークイベントぐらいどうにかなるんじゃないかなって思う人も客席にはいるかもしれない。きっと、人前であるテーマについてだったり、自分の話をして相手の話を聞くというのは想像以上に難しいし、それでお金を取るというのは結構難しいとことだと思うのだ。
 僕はトークイベントはお手伝いしたことはあるが、最初から最後まで人前に出て話したという経験はない。しかし、『水道橋博士のメルマ旬報』に連載しているので、年に一度ほど「メルマ旬報TV」というBS12の番組に呼ばれてトークをする。これは人前ではないが、テレビの収録だ。放送時間は十数分ほどだが、撮影はだいたい一時間ぐらい回している。
 初めて収録に行った時には博士さんが収録に参加していない頃で、たぶんなのだが、『藝人春秋2』に書かれている症状だった頃だと思う。そんなわけで僕自身のはじめての収録はメルマ旬報の副編集長的な存在であり、働きすぎて全然寝ていないので本当は3人ぐらいいるんだろうなって思われているであろう原カントくんさんと僕、というただの素人の男が話すという謎のトークだった。ただ、原カントくんさんはラジオをやったりとか人前で話す仕事もどんどんこなしているので、トークスキルが一般人であるはずなのに異様なレベルになっている、あとはくる球を拒まずに獲るという人なのでどんな相手でも合わせてしまう、いや合わせれる。
 その後、二回出演した時には博士さんと原カントくんさんと僕という3人での収録になった。芸人でありトークのプロである博士さんがいると心強い、どんなことを言っても受けとめて返してくださるし、どんな話を振ってもらってこちらが話しやすいようにしてもらえるのを体験するとプロっていうのはこういうことなんだなって思う。だからこそ、トークとか超怖いって実感としてあるのだけど。そんなわけで、トークイベントに行くのは好きなのだがトークって難しいなと思いながら観ているというのが僕です。


 今日はスーパー・ササダンゴ・マシンさんのプレゼントークイベントを堪能できたとはっきり言える。出演者はササダンゴさん以外だとDJ急行さん、セラチェン春山さん、RAM RIDERさん、司会は中西茂樹さん。スーパー・ササダンゴ・マシンさんとRAM RIDERさんのお二人はメルマ旬報執筆陣であり、年末の忘年会ではお話もさせていただいた。あの時はスーパー・ササダンゴ・マシンさんが同じく松竹芸能所属の角田弁護士も連れてこられて、ちょっと下世話な話をした(笑)。
 ササダンゴさんもラムさんも博士さんのフランス座のライブの楽屋挨拶とかですれ違う時にご挨拶する程度だった。あの時、きちんとお話をさせていただいたけど、ササダンゴさんは「いかり〜、碇本〜。いかりってことは塩飽水軍か村上水軍関係?」といきなり言ってきた。
 地元が瀬戸内海に近いこともあり、海がすぐという地域ではないが、父に幼い頃にうちの名字について聞いたら、「塩飽水軍の下っ端だたんじゃねえかのぉ」と言っていたので僕もずっとそう思っている。ほぼ、初対面の人に塩飽水軍とか村上水軍と言われたのは、はじめてだったのでちょっと驚いた。それをすごく嬉しそうに楽しそうにいうササダンゴさんに親近感を感じた。こっちとすればプロレスには疎いが『水曜日のダウンタウン』とか出てる人だよねって部分もあるわけで、すごい不思議ではあるのだけど。普通に有名人だもんなって思ってるっていう部分。
 ラムさんは仕草とか物言いがすごく丁寧な感じがして、どこか客観的に物事を見たりしている視線のような。これは完全に僕が思っていることだが、ラムさんは話をしながら、脳内でその先にどんどん自分の中で話が展開していく、先に進んでいるタイプの人なんじゃないかなって。そういう人は脳内での展開でふわりと周りと違う流れで笑ったりする人がいる。ちゃんと人の話も聞いているのでいつも違うところで笑っているわけではないのだが。何人かそのタイプの人を知っているが、基本的に天才肌に多い気がする。

 このイベントは5人のチームワークとそれぞれのプレゼン(の内容が被らずに)特化していたし、皆さん場馴れしているからトークが上滑りしないでどんどん笑いも含めてプレゼンしている世界の話に入らせていく。あと確実に会場にいたお客さんの反応がよかった。前回も来ていたお客さんが多かったし、このメンバーなら観たいという人たちが多いとやはり反応はよくなるし、場の空気がよりホーム感を増すことになる。これは本当に大事だと思う。ぬか漬け選手権的な「私をスキーに連れてって」を文字ったものもありつつ、二時間の予定が三時間越してたんじゃないかな、面白いからお得って感じしかしなかった。何よりに登壇している人たちが笑顔というのがいい。それ本当に大事。

 イベントが終わってから最後にササダンゴさんとチェキを撮れるチェキ会があったので、ご挨拶も兼ねて並んでチェキを撮ってもらった。帰る時に握手をしてもらったけど、デカくて温かい手だった。撮ってもらったチェキは諸事情で世に出せない(そういう最後のプレゼンからの流れだったので)、メルマ旬報忘年会の時もそうだったけどなんかササダンゴさんやさしい、まあ、僕は彼に苦学生扱いされてる(笑)。五歳しか実は変わらないっていうね。



 イベントが終わりロフト9から青山に向かって青山ブックセンターとかでひたすら時間を潰し、それでも時間が有り余るので原宿のナイキショップに寄ったりして久しぶりに表参道をブラブラ。観光客の人が本当に多いね。どうすんだろうオリンピック、まあ、やらないで欲しいけど、もうやめてはくれないんだろうから、どうまともに機能させるかとかみたいな話をするしかないんだろう。一番いいのはやらないことしかない。誰のためにやるのかわからないし、多くの人がきちんと自分の仕事をすればするほどにみんなが不幸になるシステムみたいなオリンピックって感じしか今のとこしない。


 元旦にニコラの曽根さんとユカさん夫妻とイラストレーターの横山くんと一緒に飲んだ山田くんのピアノを聴きにヘイデンブックスに初めて行った。なんてオシャレな物価の高そうなとこにあるんだ。すげえ久しぶりにあの辺りを歩いた気がする。昔、あの辺りにナンバーナインかアンダーカバーのショップがあった気がする。アンダーカバーだったような、でもなくなってた。お客さんはいっぱいだったし、なんかみんなオシャレな感じで、普段会うことがないような感じの人たちの客層だった。横山くんも来てた。アウェイ感がすごくあったんだけど、そういう場所にも顔を出したり、行くようにしないといけないなと思っていたのでちょうどよかったのかもしれない。が、アウェイはアウェイなのでおとなしくしてた。
 山田くんのピアノはすごく良くて、あの飲みの時のキャラに最初に会っていなかったら、と思ったんだけど、飲んだ時に山田くんが堀江敏幸さんの小説『燃焼のための習作』をススメてくれたのが彼のピアノを聴いてわかった気がした。きっとあのピアノの旋律と堀江さんの文章のリズムと文体はきっと合うのだと思う。文体というのは旋律。自分にない文体は、わりとそれに近い旋律を聞くとすんなりと読めるようになることがある。僕には過去にそういうことがあったから。

山田俊二「交わらない時間たち」
https://soundcloud.com/shunji-yamada/idtdmjlbwssr