Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

スプリングバケーションEP

likeaswimmingangel2008-04-28

 古川日出男「サマーバケーションEP」という小説は井の頭公園神田川の源流から神田川沿いを歩いていき、やがて隅田川に合流し、そして隅田川東京湾へ流れ出すまでの冒険譚だった。最後は月島の晴海埠頭へ。
 読んだのはずいぶんと前でやってみたいなと思っていて、連休を取ってやることにしてまた読み返した。


 そして、昨日朝バイトから帰って寝ないで井の頭公園まで電車で行く。吉祥寺で降りて井の頭公園へ。
 日曜日の朝、人はあまりいない。散歩やランニング、ペットを連れた人たちとすれ違う。その前の日の雨のせいかすごくひんやりとしている。僕は小説の中で主人公である「僕」とウナ、カネコが出会った「ひょうたん橋」に行き確かめる。
 ここが物語の始まりである。その横のため池のような小さいな池、すぐ横には流れ出している川。
 「ここが神田川の源流です」という看板、この流れに沿っていけば隅田川へ続く。


 この流れに沿う形で僕は川の横の風景を見ながら歩いた。川のほとりには公園が多くあり学校も多いかった。それぞれの家が存在し人々の生活が少しだけ垣間みれた。川には鯉がたくさんいて途中でいないポイントもあったが飯田橋付近の所の鯉はデッカいのが多かった。里程標も何度も見かけたのでデジカメで撮った。源流と隅田川までの距離が半分になった時は小説のような気持ちになった。もう半分、まだ半分。里程標の数字を見るとなぜか進もうと思えた。途中から一切消えたのは残念だった。僕が見つけてないだけなのだろうか。


 始まりは区ではなく市からで、通った順番だと「武蔵野市」→「三鷹市」と二つの市が過ぎると23区に入り、「杉並区」→「中野区」→「新宿区」→「文京区」→「千代田区」→「台東区」→「中央区」という流れ。
 武蔵野市三鷹市、杉並区を歩いていると井の頭線が時折見える。永福町の地域から神田川は北上する。
 東中野地域で中央線・総武線を越えていく。中野区と新宿の境界線として神田川があり、高田馬場へ入り東へ隅田川方面へ進むとついに山手線の中に入る。水道橋で小説同様に「東京ドーム」シティへ。ラクーアというスパへ。


 前日からのバイトで寝てなくて、お昼は暑いとまで言えないが歩き続けるとさすがに体が痛くなってきた。
 東京ドームは家族連れやカップル、外国人観光客、巨人のファンですごくにぎわっていた。
 朝の8時半ぐらいに井の頭を出発し、この時点で14時を過ぎていた。ラクーアには地下から沸いている天然温泉がある、なんか茶色い。塩分が非常に多いみたいで浸かりながら顔を洗うと塩分が傷口に染みて痛い。だがのんびりと浸かる、30分ほどして出てどうしようかと考えるが日が暮れるまでには晴海埠頭へ行こうと思う。
 本来はここで一眠りして深夜歩いて朝焼けをそこで見ようかと思ったのだけど、予想以上に早くここまで着いてしまったので行けるうちに行こうと思った。


 疲れはほとんど取れなかったが、逆に疲れを認識してしまったけど神田川を並行して歩く。やがて電気街の秋葉原へ出る。そして越えていくと山手線の外側に出る。そう今までは山手線の内側にいたのだ。僕はそこからまた飛び出した。
 屋台舟のお店というか乗り場や船が見えるようになる。神田川よりもさらに大きな川が現れてくる。神田川隅田川に呑み込まれて合流する。浅草橋を越えて柳橋を渡る。その後は隅田川を横目に南下していく。それにしても隅田川はデカイ、ホームレスの人がけっこういたり、ランニングや散歩、スケボー少年や小学生がなんか爆竹みたいのをして遊んでいたりする。


 墨田区へ架かる橋を何本か横目に通り過ぎりながら豊美橋を渡り新川へ、その地域はすぐに終わり中央大橋を渡り、ついに月島、晴美の人工の島へ。ここから晴美埠頭が長かった。もうこの時点で足はパンパンで体中は痛い、でももうすぐだと思い、歩く。
 月島から朝潮橋を渡って晴美の島へ。大きな通りをまっすぐに歩く、先は長い。でももう終わりだとも思う。巨大な空中にそそり立つような建物があった。新海誠雲のむこう、約束の場所」に出てきたあの塔みたい。
 やがて大きな空き地が目に入る、看板が置かれている。都知事が呼び込もうとしている「オリンピック」の会場の予定地みたいだ。全然人いないけどここでオリンピックするのか?するならここら辺りの風景はまた変わるんだろう。


 晴海客船ターミナルが見え始める。北海道行きの船が見えた。僕の友人がこの間北海道から船に乗ってきたがおそらくはここに着いて、ここから帰って行ったのだろうかと思いながら、晴海埠頭公園へ。
 釣りをしているカップルやごく少数の人がいた。フジテレビの社屋が見えて、レインボーブリッジが見えた。18時を過ぎていた。太陽は沈もうとしていた。まだレインボーブリッジは光ってなかったけど。


 東京湾だった。神田川は小さな流れから少しずつ大きくなっていろんな市や区をまたがり越えながら川幅を広げて、隅田川に混ざり合った。そして隅田川東京湾に注いでいる。
 流れは絶えずに、川を人生に喩えることがよくあるけどなんとなくわかるような気がした。止まる事無く大きなものにやがては呑み込まれていく。なんだか川の流れを見ながら歩くと今までのことを思い出したりこれからのことを考えたりした。


 いつもはiPodで音楽を聴いているけど一日音楽を聴かないで町の音を、街の雑音を、人々の会話を、ペットの歩く音を、時折匂う何かの匂いを、草花の揺れ方を、日差しのプリズムを、飛行機が過ぎ去った空を、大きな川の流れを、餌を取るために顔を水面井突っ込んでいる鳥を、ベビーカーを押している夫婦と赤ちゃんを、自分と共に歩いている影を。
 春だから日差しはそんなに強くなかったけど鼻は少し日焼けした、夏が近づいてきている。


 帰りの勝ちどき駅までが一番辛かった。体の至る所が動かないぐらいに疲労していた。なんとか駅まで歩いて大江戸線に乗って途中で乗り換えて家まで帰った。
 うとうとしながらTBSラジオ「Life」を聴いた、初めて生で聴いたけど起きたり寝たりを繰り返して内容が頭に入らなかったので今度配信されるポッドキャストで確かめよう。


 今体中が筋肉痛で、この痛みは歩ききったという証明。フィクションに突き動かされてノンフィクションを慣行するってのもなんだかおもしろい、変な休日。川沿いを歩いていると日曜だったから野球やサッカーをしている人が多かったな。
 まだ春だから「サマー」ではなくて「スプリングバケーションEP」完了、いや終了。

サマーバケーションEP

サマーバケーションEP